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教育相会議、ドイツ教育報告書を発表

全国教育相会議は1010日(金)、最初のドイツ教育報告書を発表した。これは、ドイツ国際教育研究所DIPFの研究者チームが全国教育相会議の委託で作成した報告書で、ユネスコのPISA調査報告のほか、経済協力開発機構OECDの他の調査結果も考慮している。

研究者は報告書の中で、連邦州ごとの学校教育制度の多様性ゆえに、ドイツ学校教育制度を認識するのは難しいとして、質的に要求の高い教育目標で協調するために、全国教育標準を導入することを求めている。また、ドイツ教育制度の深刻な問題を指摘して、財政難であっても、不可欠な学校教育制度改革を推進するよう提言している。

報告書は、中途退学者が多すぎること、高校卒業試験合格者が少なすぎること、貧困家庭や外国人の子供に対する援助が少なすぎること、学力の低い生徒と才能のある生徒が学力に応じた支援を受けていないことを指摘している。そこで、他国に比べて少ない大学卒業生の数を増やし、十分な教育を受けずに中途退学する生徒の数を減らさなければならない。顕著な出生率低下を鑑み、「ポテンシャルの浪費」はもはや許されないという。

さらに、研究者は授業環境も批判している。援助の欠如、成績万能主義に起因する心理的圧迫、生徒と教員間の冷めた関係が特徴的であるという。学校は自主的でなく、教員間の協力が乏しい。一クラスの人数が多すぎ、教科書が古く、教材への公的支出が少ない。コンピューターや新しいメディアの設備が不十分である。

また、生徒のストレスが大きい反面、低学年の授業時間数が少ない。7歳/8歳の生徒では平均で年間642時間(授業時間)と、OECD平均の747時間を下回っている。但し、この問題は、連邦政府の全日制学校プロジェクトで改善されると思われる。

全体的に、学校に対する国民の満足度が過去数年間で大きく低下している。研究者は、子供たちが目的指向の学習を始めるのが遅すぎること、ほとんど啓発されない教育施設で過ごす年月が長すぎることを批判している。

 一方、報告書では、他の国よりも少ないドイツの教育予算ゆえに、教育制度改革の実施が危ぶまれることが懸念されている。ドイツの教育予算は国内総生産の5,3%(OECD平均は5,9%)で、2004年度教育予算は1,8%削減される予定である(15500万ユーロの削減)。

連邦教育相と各州の教育相は、2004年から段階的に、全国統一した学校教育標準とテストを開発する方針である。また、毎年、学校教育の現状に関するドイツ教育報告書を作成する。OECDのシュライヒャー氏は、「教育報告書の作成は重要である」と語った。これまで、他の諸国に比べて、ドイツの教育制度に関する情報が顕著に少なかったという。

最初の教育報告書の厳しい批判を受けて、全国教育相会議は、財政難ゆえの節約措置にもかかわらず、教育予算を優先するよう政府に要請している。

2003年10月13日)

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