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連邦内閣、年金保険再建措置を決定

  連邦内閣は1019日(日)、年金保険制度再建のための短期・中期・長期的措置を決定した。失業者増加と少子高齢化を主因として膨れ上がった、年金金庫の赤字80億ユーロを短期的に削減すると同時に、現在の年金保険料率19,5%を短期的に維持し、年金保険を長期的に保証することを目的としている。

 決定された年金保険再建措置の主な内容は次の通り。

*  2004年の年金保険料率は19,5%とする。

  2004年は年金を引き上げない。2005年は、新しく導入される持続性要素(人口統計上の要素:年金受給者と就業者の割合を考慮)に基づいて年金調整を行う。

  20044月1日からは、年金受給者は介護保険料(保険料率1,7%)を全額負担する(これまでは年金保険者と折半)。

  200411日からは、新規年金受給者は月末に年金を支給される(これまでは月の初め)。

  年金金庫の変動準備金を一ヶ月分支出の50%から20%に取り崩す。

   2004年度予算で20億ユーロを節約するために、年金保険への連邦補助金を20億ユーロ削減する計画であったが、その代    わりに、すべての省が2004年に全部で10億ユーロを節約し、残る10億ユーロを2005年と2006年に節約する。

  2005年から、年金算定方式に持続性要素(人口統計上の要素:年金受給者と就業者の割合を考慮)を導入する。その結果、年金引き上げ幅は賃上げ幅を下回り、長期的に年金水準が低下する。

 年金受給年齢を67歳に引き上げるかどうかは2010年以降に決定する。但し、2006年~2008年に、実際の年金受給年齢を 現在の60歳から63歳に引き上げる。

 連邦憲法裁判所の200236日の判決(恩給同様に老齢年金も課税しなければならない)に基づき、2005年から段階的に年金を課税する。長い移行期間の後、年金保険料は免税されるが、受給する年金は課税される。200511日までに年金課税を法的に規定するために、連邦財務省は目下、老齢所得法案を作成中である。

 リースター年金をモデルとする民間老齢年金の認可基準や申請手続きを簡略化する。これは企業年金にも適用される。また、被用者は転職しても、それまでの企業年金を持ち越せる(通算可能)。

 年金マネジメントを改善し(経済性の向上、効率化)、年金保険担当機関(年金保険者)の管理コストを削減する。

 2005年以降に年金受給者になる人の保険年算定では、17歳以後の学校教育期間の加算(現在、3年間まで)を廃止する。但し、4年間の移行期間あり(2009年から発効)。

 政府は、景気回復と雇用創出のために、年金保険料率の現状維持と賃金付随コストの増大阻止を優先して、年金受給者の負担による年金保険赤字削減を図る。シュミット保健社会相は、これまでで最も困難な決定であるが、「世代間の公平性」を保つことができると語った。

与党は11月に連邦議会で短期的措置の法案を可決する計画で、長期的措置の法案(年金課税、持続性要素の導入など)も来年半ばまでに成立させる方針である。連邦参議院の同意が必要なのは、新規年金受給者の年金支給日の変更(月末に変更)だけである。

キリスト教民主同盟CDU/社会同盟CSUは 、特に政府の短期的措置に反対しており、連邦議会で賛成しないことを表明している。学校教育期間の(保険年への)加算廃止に反対する声が大勢になっている。ベーマー議員(CDU)は、連邦憲法裁判所に年金削減に対する集団訴訟をするよう、年金受給者に呼びかけた。社会福祉団体も年金受給者の一方的な負担を厳しく批判している。一方、経済団体や経済研究所はポジティブに評価している。

20031027日)

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