オバサンの独り言

 先日、オペラを観に行った。冬時間の始まりと同時に、ドイツはオペラやコンサートの季節になった。長い冬の夜を楽しむドイツ人の社交の場。オペラハウスは正装した人々で満席だった。

 偶然にも、私の隣の席に日本人男性二人が座っていた。出張中のビジネスマンだろうか。せっかくミュンヘンに来たので、本場のオペラを見ていこうと思ったのかな、などとあれこれ考えているうちに、オペラが始まった。

 今注目のオペラ歌手、カサロヴァの歌に魅了されていると、私の隣で何かが動く気配がする。なんだろうと隣を見ると、あの日本人男性がコックリ、コックリ、舟を漕いでいたのだ。まるで、山手線の電車の中みたいに。観客が拍手をすると、目を覚ますが、次の幕が始まると、またコックリ、コックリ。結局、彼らはオペラをほとんど観ていなかった。オペラが終わり、「ブラボー!」の声に起こされて、やっと目がパッチリ。

 日本での残業で疲れていたのかもしれない。時差もあるし、夜8時頃はちょうど眠くなるころ。ポカポカ暖かい劇場で、照明も薄暗く、オペラが子守唄? しかも、テーマはギリシャ神話、歌はフランス語、字幕はドイツ語。これじゃ、よっぽどのオペラ好きでない限り、眠くなるのは無理もないかもしれない。

 しかし、オペラはノイシュヴァンシュタイン城でもホーフブロイハウスでもない。観光客が名所を見る感覚で行くところではない。お金を出したのだからいいじゃないか、と言うかもしれないけれど、それは身勝手というもの。オペラに失礼だ。どうせ行くなら、少しは気合を入れてほしいわね。

オペラ上演中ずっと寝ていた日本人を見て、ドイツ人はどう思ったのだろうか。それがちょっと気になった。

20031027日)

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