オバサンの独り言

  近所に80歳と83歳の姉妹が住んでいる。よく手入れされた広い庭には大きな木が何本もあるので、秋になると、落ち葉をかき集めるのがたいへんだ。二人のおばあさん姉妹は、毎朝、きれいに庭掃除をして、落ち葉をかき集める。怠け者の私は、どうせすぐにまた落ち葉がたまるのだから、一度にまとめて集めればいいのにと思うのだが、二人は毎朝、落ち葉をかき集めている。

 雪が降ると、二人のおばあさんは、朝の暗いうちから、雪かきを始める。丁寧に雪をかいて、道が凍結しないようにしている。敷地が広いから、大変な作業だ。このおばあさんたち、週に一回は必ず窓掃除もする。私なんか、外の景色がぼんやりとしてきたころに、 ようやく窓掃除をして、「窓がきれいだと、こんなに明るいんだ!」なんて、久々の鮮明な景色にうっとり見とれている始末なのに。

 夏になると、二人は庭に座って一日を過ごす。旅行に出かけることもない。こんなに美しい庭があれば、わざわざ自然を求めて山や海へ出かけることもないのだろう。そして、毎週日曜日には、正装して、教会へ出かける。

質素に、几帳面に、実直に生きている二人を見ていると、彼女たちこそが昔の典型的なドイツ人なのではないかと思う。戦争を体験し、戦後のドイツ復興を担ってきた彼女たちは、今、少ない年金で余生を送っている。

 少子高齢化、高い失業率、財政赤字、不況などを理由に、彼女たちの年金が実質的に引き下げられることになった。政治に翻弄されてきた彼女たちの世代に申し訳ないような気がするのは、センチメンタルな秋のせいだろうか。

2003113日)

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