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経済諮問委員会、年次答申を発表

  経済諮問委員会は1112日(水)、年次答申を連邦政府に提出した。5人の経済専門家(五賢人)はその中で、「全体的には、計画されている改革は正しい方向性にある」として、連邦政府の改革アジェンダ 2010 をポジティブに評価している。五賢人の主な経済予測は次の通り。

     2003年度経済成長率は0%。計画されている改革が実施されれば、2004年度経済成長率は1,7%、実施されなければ1,5%。

     失業者数は年平均で2003年が438万人、2004年が440万人。

     ドイツ財政赤字の国内総生産比は2003年が4,1%、2004年が3,4%。最悪の場合で4,1%。

     消費者物価指数は2003年が1,1%増、2004年が1,2%増。

 経済諮問委員会は、政府の労働市場改革と社会保障制度改革をポジティブに評価したが、財政政策、特に税制改革を厳しく批判している。財政政策では、経済成長と雇用を改善するための措置がとられておらず、一貫した建て直しが進展していない。好景気の環境がなくても財政建て直しは実行できるとして、一層のコスト削減を求めた。租税政策は、将来を見通した推進力と信頼性、整合性を失ってしまい、ますます非体系的になっている。租税政策の混乱は自力による本格的経済回復にとって有毒であり、「混乱からシステムへの切り替え」をしなければならない。そのためには、租税制度を抜本的に改革しなければならないと提言している。

 税制改革(減税)の前倒しには莫大な財政赤字という問題が残されているうえ、景気の推進力となる成長効果も少ないが、あれこれ迷うのに終止符を打つという意味で前倒しを実施すべきだとしている。経済諮問委員会はマーストリヒト条約の「安定協定」の上限3%の厳守を求めた。ドイツとフランスが来年も安定協定を守れなかった場合には、相応の制裁措置がとられなければならないという。

 また、経済諮問委員会は、政府の不十分な税制改革に対して、独自の税制改革案、すなわち、資本収入と労働収入という2つの異なる収入源から成るデュアル所得税制度を提言した。資本所得の税率は一律約30%、労働所得の税率は約15%~35%(累進税率)としている。

  シュレーダー首相は、税制改革の前倒しが経済諮問委員会の年次答申により裏付けられたとして、税制改革交渉において野党に妥協する用意があることを明らかにした。クレメント連邦経済相は、政府も経済諮問委員会同様に、ドイツが経済成長のスタートに立っていると見ていると語った。アイヒェル連邦財務相は、経済諮問委員会の税制改革案を興味深い提案と評価しながらも、今は減税の前倒しのようなすでに計画されている税制改革を実施することの方が緊急を要すると語った。

 経済団体は、政府に対する経済諮問委員会の批判を支持している。ドイツ商工会議所連合会、ドイツ工業連盟、ドイツ銀行連盟などの経済団体は、さらなる改革と建て直しの努力を政府に求めた。ドイツ労働組合連合は経済諮問委員会の提案を「間違った提言」として批判した。

20031117日)

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