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CSU、年金改革コンセプトを発表

 キリスト教社会同盟 CSU のシュトイバー党首は CSU の年金改革コンセプトを発表した。子供のいる被保険者の優遇措置、世代間の公平な負担、公平な年金支給などを内容とするコンセプトは次の通り。

     2005年以降に生まれた子供が12歳になるまでの期間、子供一人当たり月額 50 ユーロの「子供ボーナス」を支給する。

     2005年以降に生まれた子供のいる被保険者は、子供一人当たり 130 ユーロの「子供年金」を受給する。

     その財源は、子供のいない被保険者の保険料。子供のいない被保険者の保険料率を2005年から段階的に 2,7%ポイントほど引き上げて、最高 12,7%にする。 CSU は子供のいない被保険者の負担増を全部で120130億ユーロと試算している。

     中期的・長期的に、年金保険料率(使用者と被用者の折半)の上限を 20%とする(但し、この保険料率は子供のいる被保険者のみ)。

     保険年が 45 年に達した被用者は満額の年金を受給できる(63歳)。

     女性は子供一人当たり 10 年間の養育期間を保険年に加算できる。

     一般の年金受給開始年齢を 65 歳とする。

     早期退職による年金受給を阻止する。

     簡易化された民間老齢年金により、低下する年金水準を補充する。その年金請求は 60 歳からとする。払い込んだ保険料を保証する。

 シュトイバー党首は、介護保険に関する連邦憲法裁判所の判決(子供のいる家庭を優遇しなければならない)を指摘して、CSU 案は子供のいない被保険者を罰するものではなく、公平な調整であると語った。

 姉妹党のキリスト教民主同盟 CDU CSU 案を批判している。争点は、年金制度における子供のいる被保険者の負担軽減の財源問題である。 CDU は「子供ボーナス」と保険年に加算される養育期間の拡大には賛成しているが、その財源は税金(公務員も自営業者も含む)であるべきだとしている。 CDU は、社会保障制度のコストを労働賃金だけで負担するのではなく、租税制度を通して幅広く負担すべきだという見解である。それに対して、CSU は子供のいない被用者の年金保険料を引き上げて、それで負担することを提案している。また、CDU が年金受給開始年齢を 67 歳に引き上げることに原則的に賛成しているのに対して、CSU は反対している。

 さらに、CDU は保険料率の上限を 20%にすることにも反対している。年金保険金庫の疲弊が懸念されるという。 CDU のミュラー氏は、子供のいない被保険者が高い保険料を払い、少ない年金を受給するという CSU 案は子供のいない被保険者を二重に罰していると、厳しく批判した。しかし、いくつかの争点があるにもかかわらず、メルケル CDU 党首は CSU と合意できるものと確信している。

 一方、リュールップ教授は、CSU 案は、所得に応じた、一部等価原則に基づく現行の年金保険制度の死を意味すると語った。子供のいない被保険者は払い込んだ保険料よりも少ない年金を支給されることも有り得るとして、一種の公用徴収に近いと批判した。家族政策は社会全体の問題であり、税金を財源としなければならない。年金制度を家族政策上の手段化するのは明らかな間違いだという。社会民主党 SPD と緑の党も CSU 案を批判している。シュミット保健社会相は、CSU 案は払い込んだ保険料に応じた年金額という等価原則に反するものであり、年金請求権と年金政策を特定のグループに対する処罰手段として利用してはならないと語った。

20031124日)

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