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見習い応募者の学力不足

    ハンブルク手工業会議所が職業訓練の職場の見つかっていない若者を対象に、数学とドイツ語の能力テスト(ハウプトシューレの9年生レベル)をしたところ、参加者 105 人中半分以上(57%)が不合格であった。例えば、「7537,643849,78」の正解を選ぶことができない。同会議所の職業訓練専門家は、これらの若者は職業訓練を受けるだけの学力がないと語った。塗装工でも、ペンキを塗るだけでなく、面積の計算もできなければならないという。

 経済団体が中学・高校卒業生の学力不足を嘆くのは決して作り事ではないようだ。ユネスコの PISA 調査でドイツの生徒の成績が悪かったことが大きな問題になったが、経済界はすでに以前から若者の学力低下を訴えていた。しかし、教育相は今なお、「企業の問題を学校のせいにすることは許されない」と反応している。

 化学大手 BASF の職業訓練統計によると、若者の学力低下問題は年々、深刻化している。 BASF25年前から、見習い応募者に同じテストをさせているが、ハウプトシューレ(9年生まで)とレアールシューレ(10年生まで)の卒業生の読み書きと計算の能力は継続的に低下傾向にあるという。1975年には、レアールシューレ卒業生は読み書き問題 4つのうち 3つが正解であったが、2003年夏には正解は2つだけ。ハウプトシューレ卒業生の正解率は 50%から 33%に低下している。

 クノール・ブレムゼ社によると、コンピューターの操作では、応募者の一部は全く基礎知識もなく、一般常識も不足している。大手企業はもはや学校の成績を信用しておらず、独自に職業訓練生の補習教育をしている。ヘンケル社では、商業関係の職業訓練生 125人のうち 40%の訓練生に、夜、数学の補習授業をしている。しかも、この訓練生のほとんどがギムナジウム卒業生(13年生まで)であるという。

 BASF では、1993年以来、採用試験に合格しなかった 520人のハウプトシューレ卒業生に一年間の BASF トレーニングを提供してきた。実習と数学・ドイツ語・経済の補習を受けることで、若者が一年後に見習いを始めることができるようにしている。また、BASF は合宿生活で社会教育もしている。毎朝早く起きて、学校へ行くということさえもできない若者が多いという。

 小規模企業は大手企業のような補習授業を提供できないため、労働局が職業学校と並行して、補習授業を援助している。2002年は平均で 64000人の職業訓練生が1週間に 38時間の補習授業を受けた。この経費は 19300万ユーロ。

 教育制度改革の成果が現れるまでには長い年月がかかるので、今後数年間は大きな改善はないと、経済界は悲観的である。

2003年11月24日)

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