ドイツの主要ニュース

与野党、税制改革と労働市場改革で合意

  連邦政府と野党は両院協議会において、税制改革と労働市場改革の妥協案で合意した。両院協議会が決裂寸前の状態になったため、1214日(日)に各党首が協議に参加し、15日(月)明け方 3 時半までの10時間以上にわたる交渉の末、妥協案で合意した。妥協案の主な内容は次の通り。(2003929日と1020日の主要ニュースを参照)

     2004年1月1日に所得税率が最低16%~最高45%に引き下げられ(現在は19,9%~48,5%)、200511日にさらに15%~42%に引き下げられる(連邦政府は2004年から15%~42%に引き下げる計画であった)。この減税前倒しによる2004年の税負担軽減は78億ユーロ(政府は156億ユーロの税負担軽減を見込んでいた)

     200411日から、通勤交通費の控除は1km当たり30セントに削減される。

     200411日から、マイホームの控除は30%ほど削減される。

     減税の財源となる民営化収入(ドイツテレコムやドイツポストの持ち株売却収入)は53億ユーロ(政府は20億ユーロを計画していた)。財源に占める新規債務の割合は25%弱。

     200411日から、解雇保護規定は、従業員数が10人以上の事業所の新規採用に適用される(政府案は5人以上だった)。但し、すでに解雇保護されている従業員には、引き続き、解雇保護規定が適用される。この改正は200411日以降に採用される従業員にのみ適用される。

     失業扶助と社会扶助が失業手当 II に統合される。原則的に、連邦労働庁が失業手当 II 受給者(長期失業者)の管轄機関であるが、地方自治体が望めば、地方自治体がその管轄機関になれる(オプション)。

     あらゆる合法的な労働(職場)が期待可能(zumutbar)とみなされる。失業手当II受給者(長期失業者)はあらゆる労働を受け入れなければならない。(政府案では、「原則として、土地慣行ないし賃金協約の賃金であれば、あらゆる労働(職場)が期待可能とみなされる」とされていた。)

     地方自治体に配分される営業税の割合が多くなる。営業税納付金を営業税収の29%弱から20%に引き下げる。地方財政改革は地方自治体に25億ユーロの追加予算をもたらす。

     生命保険会社や疾病保険会社は、出資や金融資産からの損失を100%控除できるが、出資や金融資産の売却益、資本収益は100%課税される(出資や金融資産からの損失を利益と差引勘定できる)。

     タバコ税は200431日から 3 段階に分けて(6ヶ月ごとに)、1本当たり1,2セントずつ引き上げられる(政府は200411日から20057月までに 3 段階に分けて、1本当たり1,5セントずつ引き上げる計画だった)。

 シュレーダー首相は、「もっと多くを望んでいたが、妥協案で問題ない。」と語った。メルケル CDU 党首は、改革にCDU/CSUの意向を強く反映できたとして、満足感を示した。連邦政府は、税制改革で合意を得るために、労働市場改革案件でかなりの譲歩をした。また、連邦政府は、自由業者と自営業者(開業医、弁護士、芸術家など)を営業税の課税対象に加えることや、家賃や金利、リース、用益賃貸借のような利益に無関係な支出にも営業税を課すことを計画していたが、これも野党の反対で廃案となった。

 フィッシャー外相(緑の党)は、妥協案では税制改革を完全には前倒しできないが、是認できる妥協だと語った。ドイツ労働組合連盟のゾンマー委員長は、減税前倒しの妥協案を原則的に歓迎しているが、解雇保護規定の緩和における妥協を厳しく批判した。

 連邦政府は減税前倒しにより、2004年に156億ユーロの税負担軽減を見込んでいたが、妥協案では78億ユーロに半減した。クレメント連邦経済相は、妥協案の結果、来年の経済成長率が0,2%~0,6%ポイント引き上げられると予想している。経済専門家は、この減税規模は経済成長を約0,2%ポイントしか引き上げないが、ポジティブな心理的効果があると見ている。

 この妥協案は1216日(火)に両院協議会で決議され、1219日(金)に連邦議会と連邦参議院で可決される予定である。可決された法案は200411日に発効する。

20031215日)

戻る