オバサンの独り言

 国も自治体も企業も庶民もみーんな金欠の時代。2003年は「節約」の年だった。そこで、節約にまつわる「ウソのような、本当のお話」をいくつかご紹介しよう。

節約その1

 ある官庁の職員が客にコーヒーを出した。社員食堂から届けられたコーヒー(ポット)は2,5ユーロ。ミーティング出席者は官庁職員3人と客1人。このコーヒーが大問題になった。職員がコーヒーを「ただ飲み」するために注文したのではないかという疑いがあるため、彼らの上司は注文した理由を正式に書面で説明しなければならなかったのだそうだ。この課長はあちこちに電話して事実を確認し、文書を書いて管轄部署に提出した。コーヒー代は2,5ユーロ。課長の1時間当たり労賃は2,5ユーロどころではあるまい。これが官庁の節約! 

節約その2

 年間予算を約240億ユーロに凍結される国防省は中期的に投資を260億ユーロほど削減する計画で、経費削減のために、2010年までに70ヶ所以上の基地を閉鎖する。基地のある地域の失業問題は深刻である。そんな国防省が正式な入札手続もせずに、ある経済コンサルティング会社に「国防軍再構築プロジェクト」を委託した。報酬1170万ユーロ。2004年だけでも国防軍近代化のためのコンサルティングとサービスに16560万ユーロの支出を見込んでいる国防省は、コンサルティング会社の3ヶ月間の仕事に100万ユーロを払うことなんかなんとも思わない。これが国防省の節約! 国防省と国防軍には、コンサルティング会社よりも軍事マネジメントに精通した人材がいないようだ。情けない!

節約その3

 連邦労働庁は新組織の宣伝やマーケティングのために、入札手続をせずに、あるメディアコンサルティング会社と契約した。報酬130万ユーロ。失業者に職場を斡旋するのが本業なのに、なぜ、労働庁の新しい名称や組織の宣伝をしなければならないのか? 失業保険が金欠で、失業手当が削減され、労働庁自体の節約が求められているというのに、本庁の建物を新築したり、マーケティングに莫大なお金を使うのが「連邦雇用エージェンシー」の節約か! 普通の常識を持っている人なら理解できまい。嘆かわしい!

節約その4

 2002年のDAX上場企業取締役の年俸(現金)は平均で約125万ユーロ。前年より7,4%も増えた。欠損を出している企業でさえも、役員の所得は上昇しているのだそうだ。赤字転落した大手企業の社長が責任も取らずに、世代交代だとか理由をつけて、ちゃっかりと監査役会会長に就任している。厳しい経済状況を理由にリストラして、従業員を首切りし、賃上げを断念させている役員たちが、経営責任も取らずに昇給だとは、だれが理解できるだろうか。これが傲慢大企業の節約!

節約その5

 与野党がようやく税制・労働市場・年金改革で合意した。ところが、各党首が満足気に合意を発表した翌日、なんと、連邦財務省が税収額で12億ユーロの計算ミスをしたことが明らかになった。最新の税収予測ではなく、その前の予測をベースに計算したので、減税の財源に12億ユーロの穴が開いたというのだ。しかも、ミュンターフェーリング社会民主党幹事長は「誤解だった」と一言。12億ユーロがただの誤解? この無責任なコメントには開いた口が開きっぱなし。結局、新規債務の割合を25%から約30%に増やして、解決(?)した。金がなければ、借金すればよいという考え方に腹が立つ。これが金欠政府の節約! 

節約その6

 トラックのための高速道路料金自動徴収システムを運用できず、毎月15600万ユーロの欠損を出している連邦交通省のシュトルペ大臣は、運用会社のトルコレクトが具体的な運用開始時期と損害賠償額を提示できないにもかかわらず、契約を解約せずに、さらに1ヶ月の猶予期間を与えた。20038月にスタートするはずだったシステムは早くても2004年秋に開始できる見通しだという。この1年間の欠損は20億ユーロ! この欠損のおかげで、交通省の他のプロジェクトの予算が削られるのだそうだ。トルコレクトと離れられないシュトルペ大臣には、何か別の理由があるのではないかと勘ぐりたくなる。これが交通省の節約!

 こんな「ウソのような、本当のお話」が後から後から出てくる2003年でした。2004年はもっと楽しいお話ができるといいのですが・・・。

では、皆様、良いお年をお迎えください。来年もどうぞよろしく。

20031229日)

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