ドイツの主要ニュース

連邦議会、保健改革を可決

 連邦議会は926日(金)、保健改革法案(法定疾病保険近代化法GMG)を可決した。与党(社会民主党SPDと緑の党)とキリスト教民主同盟CDU/社会同盟CSUがすでに同法案で合意していたことから、可決は確実とされていたが、与党が単独で過半数を得られるかどうか注目されていた。シュレーダー首相は、与党単独の過半数が得られなければ辞任するとして、党内の反対勢力を威嚇したといわれる。最終的には、与党単独の過半数が得られた(SPDの反対6票、緑の党の棄権1票)。

法定疾病保険近代化法GMG200411日に発効する。連邦参議院の同意が必要であるが、与党とCDU/CSUが合意済みであることから、連邦参議院の同意は確実と見られている。

 この保健改革による法定疾病保険の負担軽減は、2004年が100億ユーロ、2007年が約230億ユーロと見込まれている。疾病保険料率(平均)は、現在の14,3%から2004年は13,6%に、2005年からは13%以下に引き下げられる予定である。

 「アジェンダ2010」の主要プログラムである保健改革の要点は次の通り。

     処方箋義務のない薬、お産手当て、葬祭料、不妊手術、裸眼視力補助具、交通費などは、法定疾病保険金庫の給付リストから削除される。特別な場合のみ、例外が可能。裸眼視力補助具は18歳以下の子供と重度の視力障害者には給付される。

     医者の診察を受けた場合、被保険者は四半期ごとに一回の診察料10ユーロを払わなければならない。ホームドクター(Hausarzt)が患者を専門医にまわした場合には、専門医にさらに診察料を払う必要はない。但し、ホームドクターから専門医あての委託状なしに専門医へ行く場合、または歯医者へ行く場合は、再度、四半期ごとの診察料10ユーロを払わなければならない。予防措置としての医者・歯医者訪問(がん予防検診など)には診察料がかからない。

     処方箋の必要な薬には、価格の10%、但し、最低5ユーロ、最高10ユーロを被保険者が自己負担しなければならない。5ユーロ以下の薬は自己負担。

     被保険者は1日あたり10ユーロの入院料を自己負担する。但し、自己負担義務のある日数は毎年28日間に制限される(1年当たりの自己負担は最高で280ユーロ)。これは、施設におけるリハビリにも適用される。

     被保険者の自己負担総額(診察料、薬、入院など)の上限は、名目上の年間所得の2%とする。慢性疾患の場合は1%。児童と青少年(18歳以下)は自己負担から免除される。子供のいる家庭には控除がある。原則として、10%の自己負担(最低5ユーロ、最高10ユーロ)はすべての医療サービスに適用される。

     被保険者は定期検診や予防検診により、ボーナスポイントを集めることができる。それがどのように被保険者に還元されるかは(診察料の割引、保険料引き下げなど)、各疾病保険金庫が決定する。

     母性保護、避妊、子供の病気の場合の疾病給付金(Krankengeld)のような疾病保険外の給付サービスは税金で賄われる。そのために、タバコ税が2004年と2005年に3段階に分けて1箱当たり1ユーロ引き上げられる。

     2005年からは、歯の治療は法定疾病保険金庫の給付サービスから切り離され(使用者の負担軽減)、被保険者は歯の治療のための追加保険への加入を義務付けられる(被用者の保険料全額負担)。本人が法定保険と民間保険のどちらにするかを決定する。法定保険の保険料(所得に依存しない固定料金)は約6ユーロになる見通し。法定保険は最低50%の給付を保証する。定期的な検診が証明されれば、最高65%まで給付する。

     2006年からは、被保険者は疾病給付金(Krankengeld)のための保険料を全額負担しなければならない(使用者の負担軽減)。そのために特別保険料(名目上の給与の0,5%)を払う。

     薬局は最高3つの支店を開店できる。

     薬をインターネット上でも通販でも販売できる。

     法定疾病保険金庫は、被保険者がEU諸国内で受けた医療サービスの費用を引き受ける(保険金庫の許可は不要)。入院だけは、事前に疾病保険金庫の許可を受けなければならない。

     医者、歯医者、あるいは病院は、患者が要求した場合には、診察サービス内容とその経費を分かりやすい形で患者に提示しなければならない。

2003929日)

戻る