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コメルツバンク、企業年金を解約

   コメルツバンクはドイツ国内の従業員約26000人の企業年金を2004年末付けで解約した。2004年末までに払い込まれた分は法定年金開始と共に支給されるが、2005年以降に採用される従業員には企業年金はない。経営難に陥っているコメルツバンクは買収候補に挙がっており、企業年金解約では年間2000万~3000万ユーロしか節約できないが、企業価値を高めて、外国投資家の関心を高めることが目的といわれる。しかし、解約発表後もコメルツバンク株は1%弱しか上昇しなかった。

 取締役会は企業年金解約の理由として、厳しい経済状況を挙げている。目下、従業員代表組織である事業所委員会が取締役会からの一方的な解約に対する法的対処を検討している。取締役会が理由として挙げている経営難は昨年秋の一度限りの減価償却(約23億ユーロ)に起因するもので、営業利益は出していることを指摘している。

 ファウルロング監査役(労働組合からの代表)は取締役会の決定の合法性に疑問があるとして、鑑定を依頼したことを明らかにした。また、取締役の企業年金が解約の対象になっていないのはおかしいと語った。しかも、取締役会は昨年、トップマネージャー(企業年金が月額7140ユーロ以上になる管理職)160人の企業年金請求権を倒産の場合にも保証する措置をとっている(コメルツバンク企業年金信託協会を設立)。

 アナリストは、企業年金解約によるコスト削減は買収の可能性を高めるほどの規模ではないと評価しているが、今後、収益状況が悪化している他の銀行もコメルツバンクに倣うのではないかと予想している。コメルツバンクの解約発表後、同様に経営難に陥っているゲアリング保険会社も200411日付けで5000人の従業員の企業年金を30%~50%削減したことを明らかにした。

 すでに大手企業数社(ジーメンス、VWBASFなど)は長引く不況に対応するため、企業年金制度を再構築してコスト削減を図っている。7080年代の企業年金は最後の名目上の給与の最高20%であったが、現在は最高10%に減少している。その反面、企業年金受給者が急増しており、平均寿命も長くなっているため、企業の負担は増加傾向にある。企業年金の削減はもはやタブーではない。

 一方、多くの政治家がコメルツバンクの企業年金解約決定を厳しく批判している。クレメント連邦経済相は、この例がトレンドに発展しないことを望んでいると語った。シュティーグラー氏(SPD)は、コメルツバンクが従業員の企業年金を解約しながら、取締役の企業年金請求権はその対象外にしたことを「節操が無い」、「醜い資本主義者の歪んだ像」と批判した。アレンツ氏(CDU)は、取締役が自分のデラックス企業年金を解約対象外にしたのは極めて厚顔無恥だと語った。連邦保健社会省は、企業年金は企業における任意の合意に基づいていることを指摘して、企業年金削減・解約に法的に対処すべきだという要求を退けた。立法者は介入できないという。

2004112日)

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