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ドイツのPISA調査結果に大きな改善は見られない

 経済協力開発機構(OECD)の2003年度国際学習到達度調査(PISA)結果が12月6日(月)に正式に公表された。このPISA調査は41カ国の15歳男女約25万人を対象に実施された。ドイツでは216校の4660人の生徒がテストに参加した。前回(2000年)よりも多少改善したが、教育制度における社会的不公平の問題が顕著になった。

 PISA調査結果によると、ドイツは数学が503点(OECD平均は500点)で19位(2000年は20位)、科学が502点で18位(20位)、読解力が491点で21位(21位)と、OECD平均レベルに留まったが、問題解決能力は513点で13位と、平均を大幅に上回った。

 数学は多少良くなったものの、首位グループに1年間の差をつけられている。数学の改善はギムナジウムの生徒の学力向上に起因しており、ハウプトシューレの生徒の学力には改善が見られなかった。学力格差が広がっている。数学の授業で学ぶことに関心があると回答した生徒は55%に過ぎなかった。

 習得度レベルの一番低いグループの割合は21,6%で、OECD平均の21,4%を上回った。読解力が低下しており、これはギムナジウムの生徒にも当てはまる。読解力では女子の方が男子よりも良かったが、数学では逆であった。

 2回目の調査でもドイツの問題点として顕著になったのは、生徒の学力が社会的出身(親の教育水準、職業、収入などの社会的要因)に極めて密接に関わっていることである。ドイツでは学校形態(ハウプトシューレ、レアールシューレ、ギムナジウム)の選択が社会的出身に左右される傾向が極めて強い。また、生徒の上位と下位の学力格差が極端に大きいことも大きな問題である。

 もう一つの問題点は、外国人の子供の学力が低いことで、テストに参加した生徒の20,6%を占めた外国人の子供はドイツ人の子供よりも明らかに成績が悪かった。第一世代の若者(両親は外国で生まれ、子供がドイツで生まれたケース)は、外国で生まれて後に両親と一緒にドイツに移住した若者よりも学力が低かった。第一世代の若者の学力はドイツ人の若者よりも平均で2年間の遅れが見られる。それに対して、移住してきた若者の場合は平均で1年間遅れている。大半の外国人の子供はハウプトシューレに通っており、ギムナジウムが極めて少ない。トルコ人の生徒は数学で平均411点しか取れなかった(ドイツ平均は503点)。

 OECD教育専門家のシュライヒャー氏は、ドイツの生徒の学力に多少の改善が見られると評価する一方で、学力が社会的出身(親の学歴、職業、収入など)に大きく依存していること、学力の低い生徒の割合が高すぎること、上位と下位の学力格差が大きすぎること、外国人の子供の同化が不十分であることを指摘した。特に社会的弱者の家庭の子供や外国人の子供のハンディキャップは抜本的な改革なしには改善されないと警告している。5年生から3つのコースに分かれる現行の学校制度は学力の低い生徒には不利になるという。

 それに対して、全国文化相会議は、外国人の子供の早い時期(幼稚園)での支援とドイツ語教育の促進を強化することを明らかにした。また、授業の改善、学力の低い生徒の支援強化、教員の養成と継続教育の強化など、現行教育制度の改革を引き続き推進する計画である。

2004年12月13日)

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