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連立与党、差別禁止法案で合意

   連立与党は差別禁止法案で合意した。これは職場や日常生活における差別を禁止する法律である。社会民主党と緑の党1998年に政権を獲得して以来、差別禁止法を改革目標の一つとしていたが、長い間合意に至らなかった。これでEU指令を国内法に実施することになるが、EU指令よりもはるかに厳しい内容になっている。来年1月に連邦議会で同法案の審議に入る。連邦参議院の同意は必要としない。

 法案によると、いかなる者もその出身(人種)、性別、信仰、年齢、障害、同性愛ゆえに不利に扱われてはならない。但し、例外が認められる(例えば、特定の職場における年齢制限、女性や身体障害者のための促進措置など)。「個人生活領域」も例外とするが(個人が中古車を売る場合や部屋を貸す場合など)、どこまでが「個人生活領域」なのかは定義されていない。

 差別の被害者は損害賠償と慰謝料を請求する権利があり、訴訟を起こすことができる。差別禁止団体や労働組合、事業所委員会がその代理人を務めることも可能である。被害者は差別を疏明するだけでよく、訴えられた側が正当化事由を証明しなければならない(証明責任は訴えられた側にあり、証明責任の転換はない)。但し、刑事法上の制裁はない。また、連邦家族省に差別禁止専門委員が設置される。

 差別禁止法は経済界に広範な影響を及ぼすものと予想される。使用者は賃金や採用、昇進、解雇、労働条件において差別基準を考慮しなければならない。また、保険会社やサービス業、家主、ホテル、飲食店、小売業なども法律の影響を受ける。

 ドイツ使用者連盟のフント会長は、柔軟性のない労働法に縛られているドイツ経済はこのような法律によりさらに不必要に責任を負わされるとして、使用者にとって見通しのきかないリスクを警告した。それに対して、労働組合は法案を歓迎している。また、野党は、「自由社会の基盤である契約の自由が脅かされる」と批判すると共に、訴訟の急増を懸念している。

2004年12月22日)

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