オバサンの独り言 「災」の年、2004年は想像を絶する大災害となったスマトラ沖大地震とインド洋津波で悲しい幕を閉じることになった。ドイツでも津波は “Tsunami“ と言う。寿司や漫画のような日本語が国際語となって世界中に広まることはうれしいが、腹切(Harakiri)や神風(Kamikaze)、津波のような国際語はできるだけ使う機会がないことを望む。 人それぞれ、様々な思いでこの一年間を振り返っていることだろう。色々な出会いがあり、別れがあった。うれしいこと、悲しいこと、腹立つこと・・・。ちょうど1年前の独り言を読んでみると、世の中、大して変わっていないと思う。あの「ウソのような本当のお話」が、省やプロジェクトの名前を替えれば、そのまま2004年のお話になってしまうのだから。 ドイツでは年末の挨拶で ”Einen guten Rutsch ins neue Jahr !” (良いお年を!)と言う。”Rutschen”は「滑る」という意味 だ。「新年にうまく滑り込んでください」とは、さすが寒い国ドイツの粋な表現だと思っていたら、“Guten Rutsch!“の語源はドイツ語の“Rutschen”(滑る)とは全く関係ないらしい。 “Guten Rutsch”の語源はイディッシュ語(中世ドイツ語とヘブライ語との混成語で、ドイツ及び東欧のユダヤ人によって用いられている)の“Rosh Hashana” (ユダヤ暦の年の初め)に遡り、イディッシュ語の「良いお年を!」は “a gutn Rosch“ (Guten Anfang)であった。この“Rosh”が後に“Rutsch”になったらしい。つまり、後世のドイツ人はこの“Rutsch”(初め)をドイツ語の“Rutsch”(滑る)と誤解したのである。この語源を知っているドイツ人は意外と少ないのではないだろうか。 「災」の2004年から2005年にうまく滑り込んで(“Guter Rutsch”)、新年の良い始まり(Rosch=“Guter Anfang”)を願うという二重の意味で、世界中が“Guten Rutsch”を望んでいる。「始まりが肝心」という諺もある。2005年が「災いを転じて福となす」年になることを心から祈りたい。 (2004年12月30日)
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