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シュレーダー首相、介護保険改革をストップさせる

 シュレーダー首相は、シュミット保健社会相の介護保険改革計画をストップさせた。アンダ政府スポークスマンは、シュレーダー首相とシュミット保健社会相は、現時点では大きな介護保険改革をしないことで合意したと発表した。シュミット保健社会相は、子供のいない人とすでに子供が独立している親から一律月額2,5ユーロの追加介護保険料を徴収する計画であった。(200415日の主要ニュースを参照)

 シュレーダー首相は、「国民の負担の限界に達している」として、追加保険料の徴収を中止させた。但し、これは個別決定であり、改革政策全体の終わりを意味するものではないと強調した。シュレーダー首相は、今年、多くの選挙を控えているにもかかわらず、SPD 支持率の低下に歯止めが利かなくなっている状況を鑑みて、改革にブレーキをかけたものと見られている。シュレーダー首相の決定は党内では歓迎されている。

 シュミット保健社会相は、介護保険改革は連邦政府の改革アジェンダの一部であり、この議会任期中に介護保険制度を広範に改革する方針であることを明らかにした。但し、親の負担軽減をどのような形(保険料引き下げ、税金による補助、控除、子供のいない人の保険料引き上げなど)で実施するかはまだ決まっていないという。シュミット保健社会相は、家族の介護保険負担を軽減するという憲法裁判所の判決を満たす法案を2,3ヶ月中に提出する計画である。しかし、広範な介護保険改革の具体的な期限はないとしている。

 アンダ政府スポークスマンは、シュレーダー首相とシュミット保健社会相、与党首脳部は、連邦憲法裁判所が要求する親の負担軽減で原則的に合意したと語った。また、この議会任期中にさらなる介護保険改革を実施することでも合意に至ったという。緑の党は介護保険改革の中止を厳しく批判していた。

 SPD と緑の党は、介護保険改革コンセプトの具体的な基本方針を作成し、段階的に実施していく計画である。連邦憲法裁判所の判決の期限通りの実施のほか、痴呆症患者の介護改善と在宅介護の強化を目指している。

 キリスト教社会同盟 CSU のゼーホーファー氏は、介護保険改革を選挙前から選挙後に遅らせて「有権者をだます」選挙戦略として、シュレーダー首相の決定を厳しく批判した。また、成人した子供の親からも追加介護保険料を徴収するという政府の計画にも反対している。キリスト教民主同盟 CDU のミュラー氏は、介護保険金庫の資本増強を求めている。現在の賦課方式だけでは長期的に介護保険制度が成り立たないと語った。

 1995年に導入された介護保険金庫は1999年以来赤字を計上している。2002年の赤字は38000万ユーロで、昨年の赤字は65000万ユーロ(70%増)と推定されている。積立金は2002年が50億ユーロだったが、昨年は428000万ユーロに減少した模様。積立金のおかげで、これまでは赤字にもかかわらず、保険料率を安定して維持することができた。しかし、遅くても3年後には、法律で最低22億ユーロと規定されている積立金が給付増大により使い果たされてしまうと予想されている。賦課方式が予定よりも早くその限界に達する見通しである。遅くともその時点で、政府は対処しなければならない。

200429日)

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