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シュトルペ交通相、トル・コレクトとの契約を解約

 シュトルペ連邦交通相は217日(火)、トル・コレクト首脳部との11時間にわたる交渉の末、トラック用高速道路料金自動徴収システムに関する契約を解約すると発表した。連邦交通省は新たな入札の準備を進めるとともに、新システムが構築されるまでの期間は再びトラック用ユーロ・ビネット(高速道路を利用するトラックはこのステッカーを購入しなければならない。連邦の収入は月々約4000万ユーロ)を導入する。トル・コレクトの損害賠償責任については仲裁裁判所が決定する。ユーロ・ビネットの再導入は早くても今年10月ないし11月になる見通しで、新しいシステムの運用までには最低23年かかると見られている。

 トル・コレクトには、解約後2ヶ月以内に、オファーを改善して、交通省との合意を図る機会が残されている。しかし、シュトルペ交通相はその可能性を懐疑的に見ている。

 シュトルペ交通相は、トル・コレクトが提示した条件は法的にも技術的にも経済的にも確信できるものではなかったと厳しく批判した。連邦の要求を考慮したオファー変更を求めたが、満足いく回答を得られなかったという。十分な違約金と適切な賠償責任を提示せずに、かえって企業の契約告知権を要求してきた態度は、トル・コレクトが自らの技術を十分に信頼していないことを推測させるものだと不快感を示した。

 トル・コレクトの出資者がダイムラー・クライスラーとドイツテレコムというドイツを代表する大企業であることから、連邦政府はドイツ経済のイメージダウンを恐れて、このプロジェクトを挫折させないだろうと憶測されていた。

シュレーダー首相は、トル・コレクトの提案は「受け入れられない」と、ダイムラー・クライスラーとドイツテレコムの首脳部を批判した。プロジェクトは政治上の問題ではなく、技術上の問題ゆえに挫折したのであり、その責任はトル・コレクトにあるとして、シュトルペ交通相を擁護した。

 それに対して、メルケル CDU 党首は、「ドイツ経済立地にとって致命的なシグナルだ」と語った。自由民主党は連邦議会の審査委員会を設置するよう要請している。キリスト教社会同盟 CSU はシュトルペ交通相の辞任を求めた。また、経済界では、今回のスキャンダルはドイツテレコムとダイムラー・クライスラーの醜態と受け止めており、ドイツ経済のイメージダウンを懸念しているが、今後 2ヶ月間でトル・コレクトが連邦交通省と合意に至り、プロジェクトを続行することを期待している。

 本来、トラック用高速道路料金自動徴収システムは2003831日に運用を開始する予定であったが、技術上の問題から運用が延期されていた。連邦政府は2004年末までに、予算に組んでいた30億ユーロ以上の収入を失うことになる。シュトルペ交通相によると、欠損は全部で約65億ユーロに達する。トル・コレクトは2段階によるシステム導入案を提示していたが、損害賠償責任の上限を年間5億ユーロに限定することと、企業の契約告知条項を追加することに固執したため、損害賠償責任を巡って連邦交通省と対立していた。現契約では、損害賠償は無制限になっている。

 連邦政府は年間実質22億ユーロの収入を連邦予算に見込んでいた。連邦財務省は、この収入を財源にしていた交通プロジェクトを新規借入で賄う意向である。但し、連邦予算の新規借入を増やさないために、借入の大部分をドイツ鉄道が引き受ける案などが考えられるという。連邦財務省と連邦交通省は交通プロジェクトの資金調達について話し合い、コンセプトを連邦議会の予算委員会に提示する計画である。

 一方、ダイムラー・クライスラーのシュレンプ社長は、プロジェクトの挫折が経営上の大きなリスクになることを初めて認め、10日以内に新たなオファーを連邦交通省に提示して合意を図ることを明らかにした。この発言に対して、連邦政府は懐疑的な反応を示している。シュトルペ交通相は65億ユーロ以上の損害賠償を請求すると発表した。

 トル・コレクトはこれまでに7億ユーロ以上をプロジェクトに投資しており、解約発表後も、設備取り付けを続行している。トル・コレクトのスポークスマンによると、技術上の問題が解決し、600台のトラックでのテストは支障なしに機能しているという。

2004223日)

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