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PSA倒産が及ぼす労働市場改革への影響

 オランダの人材派遣会社「マートヴェルク」のドイツ子会社が支払不能を申請した。マートヴェルクは、連邦雇用エージェンシー(旧連邦労働庁)が労働市場改革(ハルツ改革)の一環として構築したパーソナル・サービス・エージェンシー・ネットワークにおける最大の PSA 会社で、全国で約9500人の人材派遣を行っていた。連邦雇用エージェンシーによると、マートヴェルクが雇用していた約9500人の派遣社員は他の PSA に移されるか、再び失業届けをしなければならない。

 ハルツ改革の中核であるパーソナル・サービス・エージェンシー PSA (人材派遣会社)プロジェクトでは、PSA が連邦雇用エージェンシーの委託で失業者の定職への道を支援する。PSA は連邦雇用エージェンシーとの契約において、一定人数の失業者を派遣社員として雇用し、1年以内に継続的な定職を斡旋することを義務付けられる。その対価として、連邦雇用エージェンシーは PSA に補助金(斡旋経費と斡旋特別報奨金)を付与する。連邦の今年の PSA 補助金は全部で6億ユーロ。PSA は全国に985社あり、その内の201社をマートヴェルクが運営していた(市場シェア20%以上)。

 これまでに985社の PSA が雇用局の委託で44000人の失業者に職場を提供している。現在、その内の32000人が従事しているが、20034月以来、新しい継続的な定職を見つけた失業者は5500人に過ぎない。

 連邦経済省のスポークスマンは、PSA プロジェクトを引き続き推進することを明らかにした。約半年前にスタートした PSA プロジェクトの最終的な評価は2006年に予定されている。社会民主党 SPD の労働市場政策担当者はマートヴェルクの倒産を「大きな痛手」としながらも、PSA コンセプトが挫折したことにはならないと強調した。補助金を引き上げる計画もないという。労働市場が回復すれば、PSA の経営も改善すると楽観的に見ている。

 それに対して、野党は、ハルツ改革の中核である PSA モデルが挫折したとして、PSA の廃止を求めている。その資金をもっと有効な目的に使用すべきだという。緑の党は、連邦雇用エージェンシーの PSA 入札方式の見直しを要請している。価格ではなく、地域における経験に基づく選択が必要だとしている。

 インサイダーは、マートヴェルクの倒産は PSA 倒産の波の始まりだと見ている。安い価格だけで落札した PSA の倒産は避けられないという。PSA の問題は補助金でコスト補償できないことにある。補助金は平均で失業者一人当たり月額約1000ユーロ。短期間で職場を見つけられれば、利益が出るが、現在の労働市場では難しく、赤字ビジネスになっているのが現状である。

 そこで、業界の団体は、連邦雇用エージェンシーに対して、PSA 入札をやり直し、PSA コンセプトを見直すよう求めている。例えば、特別報奨金は、失業者の新しい定職が実際に見つかった時点で支払うべきだとしている。調査結果によると、失業者の一部は短期間しか PSA に雇用されていない。連邦雇用エージェンシーはマートヴェルクに支払った補助金(百万単位)も失うことになり、二重の打撃である。

2004223日)

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