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反ユダヤ主義が再び欧州で広まっている

   反ユダヤ主義が再び欧州で広まっており、ユダヤ人に対する暴力行為が故意に過小評価されている。反ユダヤ主義的偏見は集団の無意識の中に根強く生き続けているようだ。欧州委員会のプロディ委員長は219日(木)、反ユダヤ主義に関するセミナーで、欧州における反ユダヤ主義の撲滅を目指す戦略コンセプトを作成すると発表した。ホロコーストの事実性を否定することや人種差別主義的行為を法的に処罰する計画であるという。ユダヤ人代表はユダヤ人の不安を指摘して、欧州連合に対し、断固たる対処を求めた。重点は教育政策にあるとしている。

 欧州委員会の委託で実施されたアンケート調査結果によると、欧州の回答者の59%が「イスラエルは世界平和にとって最大の危険要因だ」と回答している(ドイツでは65%)。特に、イスラム教徒の移住者が欧州における反ユダヤ主義的傾向の要因になっている。また、イスラエル国外における反ユダヤ主義的暴力行為の大半は西欧で発生しており、特に、フランスで増加している。

 ベルリン工科大学の反ユダヤ主義研究センターの調査結果によると、鉤十字の落書きや墓地の冒瀆、脅迫状などは典型的な極右主義者の犯行であるが、ユダヤ人への身体的攻撃は主に若いイスラム教徒によるものである。

 東欧諸国、特にカトリック教徒の多いポーランドやハンガリーでは、「古い」反ユダヤ主義が依然として国民の広い層で見られる。しかも、かつての共産主義政権の反シオニズムが今も残っている。公の場における反ユダヤ主義的発言、ユダヤ人の施設やユダヤ人に対する攻撃は東欧諸国では日常生活の一つになっている。

 西欧では、ネオナチ傾向に加えて、反ユダヤ主義的偏見を持つ新保守主義者が市民社会でも再び受け入れられるようになっている。また、「左翼」の反ユダヤ主義が顕著になってきた。左翼グループのイスラエル批判として始まった「反シオニズム」は、実は、美辞麗句で包んだ反ユダヤ主義の正体を現している。

 西欧、特にドイツやフランスの左翼グループは、68年代のように「反帝国主義」として論証している。それによると、イスラエルは米国ユダヤ人が決定する米国政治の片腕とみなされる。イスラエルは植民地保有国であり、欧州の反ユダヤ主義とホロコーストのおかげでユダヤ人の国が創立された。この種のイスラエル非正当化はイスラム世界の反ユダヤ主義と同じである。

 左翼グループがベルリンや他の都市でハマスやヒスボラの欧州代表者といっしょに反イスラエルのデモをし、「ユダヤ人に死を!」のようなスローガンを叫ぶのを黙認している。フランス、ベルギー、英国、ドイツでは、イスラム教徒のユダヤ人に対する憎悪がユダヤ人に対する一連の暴力行為につながっているが、それが故意に過小評価されている。イスラム教徒のユダヤ人に対する憎悪が欧州のユダヤ人に対する憎悪と結びついて、反ユダヤ主義的暴力行為が助長されている。

 2000年のイスラエル占領地におけるインティファーダの後、欧州に反ユダヤ主義の波が押し寄せ、2001911日の米国同時テロ後、さらに強まっている。当然、イスラム教徒の多い国、例えばフランス、ベルギー、オランダにその傾向が強い。西欧最大のユダヤ人社会があり、イスラム・アラブ系の移住者が多いフランスの状況が危険である。世界におけるユダヤ人に対する攻撃の3分の120009月~20021月にフランスで発生している。

2004223日)

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