オバサンの独り言

 ミュンヘンといえば、ヴァイスビールと白ソーセージとブレーツェル。長い間ミュンヘンを離れていると、ヴァイスビールを飲みながら、ブレーツェルと白ソーセージを食べたいと思うことがある。日本人の私がそう思うのだから、ミュンヘン人だったら、なおさらのことだろう。ふるさとの味にはこだわりがあるし、誇りがある。

 先日の南ドイツ新聞に、白ソーセージとブレーツェルを巡る争いの記事が載っていた。外国産の白ソーセージからミュンヘン本場の白ソーセージを守ろうと、「ミュンヘン白ソーセージ保護団体」が設立されたそうだが、今度はブレーツェルの保護団体も必要になりそうだというお話だ。

 ビルト紙によると、「ブレーツェルはブランデンブルク州のプレツェル(Prötzelという町に由来する」というから、これは穏やかではない。それを知ったバイエルン州パン焼き職人同業組合は、「ブレーツェルがプロイセンの発明だなんていわれて黙っていられるか!」と、ご立腹だ。「まずは敵を知れ」ということで、早速、「プレツェルの町の名が初めて記録に現れるのは1375年だ」という事実を調べ上げた。

 ところが、ブレーツェルの起源はもっともっと古いのだ。元々、ブレーツェルは精進期間中の菓子で、すでに 743年に教父たちが司教会議でブレーツェルに言及していたという。

 ブレーツェルという名前はラテン語の「Braciccum」(「腕」という意味)に由来し、それが古高ドイツ語のBrezitellaになり、後に「Brezel」あるいは「Breznになったとか。ブレーツェルの独特の形は、僧侶が腕を組んだ形から連想したものらしい。なるほど、そう言われてみると、確かに腕を組んだ形によく似ている。

 ご存知かと思うが、ミュンヘンは「ムニヘン(僧侶たち)のすむ村」でありました。このムニヘンがメンヒェンになり、ミュンヘンになったらしい。ミュンヘン市のワッペン「ミュンヒナー・キンドル」が僧衣姿の僧侶であるのはこれに由来している。

 ちなみに、世界最古のビール醸造所はミュンヘン近郊のヴァイエンシュテファンにある。そこのベネディクト会修道院がビール醸造権を取得したのが1040年に遡るというから、ミュンヘン人のビールとブレーツェルとのお付き合いはかなり古いようだ。

 ブレーツェルがプロイセンの発明でないことがわかって、まずは一安心。名前が似ているからなんていうごまかしは効かないのです!

 グローバル化の時代だからこそ、こんな「こだわり」を大切にしたいものである。

200431日)

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