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連邦議会、年金改革法案を可決

 連邦議会は311日(木)、年金改革法案を可決した。野党は反対したが、与党の単独過半数で成立した。この法律は年金保険金庫の長期的な負担軽減と安定化、年金保険料率引き上げの制限を主な目的としている。労働コスト増大が雇用と経済成長を抑制するのを回避することを目指している。

 この年金改革により、持続性要素(人口統計上の要素)が年金算定方式に導入され、他の措置も加わって、年金引き上げが賃上げよりも低水準で推移するようになる。主な内容は次の通りである。(20031027日と128日の主要ニュースを参照)

     持続性要素(人口統計上の要素)が年金算定方式に導入される。保険料拠出者と年金受給者の関係が考慮されるため、年金引き上げが抑制される。

     年金調整では、今年は引き上げがなく、来年の引き上げ幅は旧西独が0,38%、旧東独が0,61%。それ以降の引き上げ幅も低水準にとどまる。

     年金保険料率は2020年までに20%を、2030年までに22%を上回ってはならない。現在は19,5%。

     年金水準保護条項が規定される。新しい年金算定方式では、平均的な保険年45年で、疾病保険料及び介護保険料を差し引いた後の総標準年金(税引き前)が現役の被雇用者の社会保険料及び年金保険料差し引き後の総所得と比較される。この割合が税引き前実質年金水準で、現在は53,06%。この年金水準は2020年までに46%に、2030年までに約43%に引き下げられるが、これを下回ってはならない。保護条項がそれ以下に低下することを阻止する。政府は、年金水準が46%を下回る危険性が出てきた時点で、対応措置を検討することを義務付けられる。対応措置としては、年金保険金庫への連邦補助金の増加、あるいは、年金受給開始年齢の引き上げが考えられる。新しい年金水準はこれまでの年金水準(税引き後の所得に基づく算定)とは比較できない(従来の算定方式では、現在の実質標準年金水準(社会保険料引き・税引き後)は68%弱。平均で月額実質1080ユーロ(旧西独)/950ユーロ(旧東独))。委員会は年金受給開始年齢を現在の65歳から67歳に引き上げることを提唱しているが、政府はこの案件について2008年以降に決定する。

     早期退職ないし失業による年金受給開始の年齢が2006年から2008年の期間に60歳から63歳に引き上げられる。但し、信頼保護規定により、20031231日までに雇用関係の終了に関する手続きをした、あるいはその時点で失業していた、19521月以前に生まれた被保険者には適用されない。

     保険年算定では、17歳以後の学校教育期間の加算(現在、3年間まで)を廃止する。但し、職業学校の生徒はその例外とする。この措置は、年金月額における最高58ユーロの減少を意味する。

     年金金庫の変動準備金を再び引き上げる。目標は1,5ヶ月分支出相当額。

     年金課税については別の法律(老齢所得法)で規定される。この法案はまもなく連邦議会で審議されるが、連邦参議院の同意を必要とする。

 社会民主党 SPD の左派と労働組合の反対で法案可決が危ぶまれたため、SPD 首脳部は年金水準保護条項という妥協で左派との合意に至った。今回もギリギリの単独過半数であった。

 キリスト教社会同盟 CSU のゼーホーファー議員は、同法案は家族政策上、世代政策上公平ではなく、連帯原則に則っていないと厳しく批判した。野党は、「年金保険料率の下限22%、年金水準の下限46%を達成するという矛盾した目標は年金改革を無価値なものにする」として、「この法律は新たな年金改革の幕開けにすぎない」と見ている。それに対して、与党は、野党が独自の年金改革案で合意できなかったことを批判した。

 同法案は連邦参議院で審議されるが、連邦参議院の同意を必要としない。連邦議会は連邦参議院の異議申し立てを却下できるため、法案の成立は確実である。

2004315日)

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