オバサンの独り言 200人の死者を出した列車爆破テロの3日後に行われたスペイン総選挙は、野党の社会労働党の逆転勝利となった。テロの前は与党の国民党の圧勝が予想されていた。爆破テロをイラク戦争参加の結果と見た市民の政府批判が爆発したようだ。テロに対する怒りが米国寄りの政府への怒りに転嫁してしまったということか。大衆はあっという間に方向転換してしまった。世論は移り気である。 私は2002年9月のドイツ総選挙を思い出した。当時、経済低迷、失業者増加など、公約を守れなかったシュレーダー首相に対する国民の不満が募り、与党の敗北が確実視されていたが、選挙直前の大洪水とイラク論争で情勢が急遽逆転し、与党がギリギリの勝利を果たした。その後の政府に対する大衆の失望は与党支持率が示している。 大衆の感情的反応のエネルギーには驚くものがある。反面、そら恐ろしいと思う。まさに「諸刃の剣」だ。マスメディアを使って操作すれば、大衆は驚くほどの速さで、一つの方向に突進する危険性を秘めているからだ。ドイツも日本も過去に、その恐ろしさを経験済みだ。 今年は世界的に選挙の年。大衆心理の操縦に励む政治家がさぞや多いことだろう。しかし、政治家だけではない。テロリストもちゃんと承知している。スペインの大衆の反応を見て、テロリストたちはこれほど有効な手段はないと、さぞや満足していることだろう。民主主義国家の政治を一瞬にして変えることができるのだから。テロリストがこのうまみを味わってしまったことに私は大きな危機感を覚える。今後、テロリストが大衆の心理を巧みに操作するテロ行為を世界中で展開するのではないかと懸念する。テロとの戦いは新しい次元に入ったように思う。 目の前の一本の大木だけに目を奪われるのではなく、その周りの木々にも目を向けて、森全体を見渡せる冷静な判断力を養いたいものである。大木どころか、ちっぽけな木に躓きっぱなしの私は反省すること頻り! スペイン国民が将来、ドイツ国民のように新政権に失望することがないように祈っている。 (2004年3月15日)
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