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生産拠点の海外移転は非愛国的?

   ドイツ商工会議所連合会のブラウン会長の発言が「愛国心」論争に発展した。ブラウン会長は新聞インタビューの中で、「政治がよくなるのを待つのではなく、今すぐ自ら行動し、EU 東方拡大のようなチャンスを利用することを企業に勧める。それが職場と職業訓練生の職場を確保する対策だ」と語った。また、ブラウン会長は、連邦政府は根本的に経済を正しく理解していないと批判した。

 シュレーダー首相は、ブラウン氏の発言を「愛国心のない行為」と厳しく批判し、経済界も公共の福利に対する義務があると語った。それに対して、ブラウン氏は、一貫した改革政策を実施することに本当の愛国心があると反論した。発言の本意は改革に対する意識を高めることにあったという。結局、ブラウン会長がシュレーダー首相に、職場の外国移転を企業に促す計画がないことを約束して、和解した。

 連邦政府と経済界の間で生産拠点の外国移転を巡る論争が激しくなっている。特に、経済界は緑の党の環境政策に生産拠点移転の原因があると批判している。ドイツ工業連盟のロゴヴスキー会長は、「失業の色は緑だ」と皮肉った。多くの企業は生産拠点を外国に移すことによってのみ国際競争力を維持しているという。人件費や税金だけでなく、職業訓練公課、コスト負担の大きい環境政策(エコ税、再生可能エネルギー法など)を指摘して、連邦政府に対し改革路線の推進を要求している。

 フィナンシャルタイムズ・ドイチランド紙の報道によると、IT企業はコスト削減のために、低賃金国に活動を移転しており、ドイツIT産業は毎月数千の職場を失っている。「外国に移転しなければ、競争力を維持できないので、最終的にはドイツの職場の一部を失うことになる」と、SAPのカゲルマン氏が語った。ドイツのソフトウェア会社は特に研究開発部門を外国に移転しているが、これは「経済的強制」であるとして、「愛国心論争」に不快感を示した。

 ドイツIBMのライツナー社長は、ドイツIT業界は2003年に国内の7万の職場を失ったと語った。どの経済部門でも「オフショアリング」がテーマになっているという。インドや中国、ルーマニア、ロシアのソフトウェア開発者の給与はドイツの開発者の3分の1であり、外国の枠条件の方がドイツよりも有利であることを指摘した。失業の主因の一つは柔軟性にかける労働市場法であるという。

 ジーメンスのガンスヴィント役員は、グローバル化とは、需要のある、成長している市場で純付加価値生産を提供することだと語った。金属産業労働組合によると、ジーメンスは1万人以上の職場を外国に移転する計画である。

2004329日)

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