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連邦内閣、排出権取引に関する基本方針を決定

 連邦内閣は331日(水)、排出権取引に関する基本方針(排出権割り当て計画)を決定した。トリティン連邦環境相(緑の党)とクレメント連邦経済相(SPD)の意見が真っ向から対立して調整できなかったため、シュレーダー首相が介入してようやく妥協案で合意した。

 ドイツは2012年までに地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量を1990年度レベルよりも 21%ほど削減しなければならない。現在、すでに19%弱削減している。2005年からは EU 域内の二酸化炭素排出権取引が始まり、加盟国は二酸化炭素排出量の削減に努める。ドイツで参加する約2400の工場及び発電所は資格証明書で排出量を割り当てられる。排出量が割り当て量よりも少ない企業は節約した排出量の権利を売ることができ、排出量が割り当て量よりも多い企業は超過分の排出権を買わなければならない。

 クレメント経済相が最後まで譲らなかったため、トリティン環境相の原案よりも大幅に産業界に有利な内容となった。トリティン環境相は2500万トンの排出量削減を要求していたが、妥協案では1000万トンにとどまった。ドイツは京都議定書で定められた目標、2012年までに全部で1700万トンの二酸化炭素を削減する目標を達成しなければならない。その内の1000万トンを産業界が削減し、交通と一般世帯が合わせて700万トンを削減する。

 排出権割り当て計画によると、産業界は2005年から2007年までの期間に二酸化炭素排出量を2,2%削減する(トリティン案は7%以上)。従って、現在の年間5500万トンから2007年には年間5300万トンに排出量を削減しなければならない(トリティン案は48800万トン)。2008年から2012年までの期間には年間49500万トンに削減する(トリティン案は48000万トン)。また、鉄鋼・ガラス・セメント・セラミック工業は削減対象から除外される。

 景気回復が足踏み状態に陥り、危機感が広まっているため、企業も労働組合もトリティン環境相の行き過ぎた要求に反対していた。ノルドライン・ヴェストファーレン州は今秋に地方選挙、2005年に州議会選挙を控えており、社会民主党 SPD の行方を決定する重要な州の産業にさらなる負担を負わせることはできないというクレメント経済相と SPD の思惑が背景にある。産業界は妥協案を歓迎しているが、自然環境保護団体は厳しく批判している。

 ドイツは欧州委員会の期限の最終日に排出権割り当て計画を決定し、提出した。大半の EU 加盟国では排出権取引準備が遅れており、期限通りに暫定割り当て計画書を提出したのは7カ国だけである。

 リーゼ欧州議会議員(CDU)は、自国の産業を優遇するために気前のよい排出量割り当てをする加盟国もあると、オランダとオーストリアを名指しで厳しく批判した。様子を見るために意図的に提出を遅らせている加盟国も多いという。

200445日)

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