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ドイツ連邦銀行、ヴェルテケ総裁の休職を決定

 ドイツ連邦銀行の理事会はヴェルテケ総裁を休職させることを決定した。辞任を拒否しているヴェルテケ総裁は理事会の休職決定を受け入れた。理事会は、高級ホテル宿泊スキャンダルは「解任を正当化するほどに重大な過誤ではない」と判断した。「解任するに十分な理由がない」としている。

 検察当局が利益収受の初期嫌疑ゆえにヴェルテケ総裁に対する捜査手続きを開始したことから、理事会はその結果を待って、最終的な決定を下す意向である。それまでは、シュタルク副総裁が代行する。ヴェルテケ総裁の任期は2007年まで。

 また、ドイツ連邦銀行は欧州中央銀行の行動規範を理事全員に即時適用することを決定した(任務に関連する贈り物や報酬を受けることが禁止される)。これまで、ドイツ連邦銀行には独自の行動規範がなかった。

 シュピーゲル誌の報道で、ヴェルテケ総裁が200211日のユーロ現金導入に際し、ベルリンの高級ホテル「アドロン」に家族と宿泊した宿泊費(スイート2部屋、4泊、総額7661,20ユーロ)を民間のドレスナー銀行に負担させていたことが明らかになった。ヴェルテケ総裁はユーロ現金導入前日の大晦日のユーロ歓迎パーティーにドレスナー銀行から招待されていた。

 ヴェルテケ総裁は事実発覚直後のインタビューで、「第三者の催し物に招待されれば、その経費を負担してもらうのは当然だ」と語り、反省の様子もなく、謝罪もなかったことから、野党が辞任を要求しただけでなく、連邦政府や社会民主党(SPD)(ヴェルテケ氏は SPD 党員)からも批判の声が大きくなった。連邦政府と連邦財務省は、ヴェルテケ総裁の行為は官吏の規律に反し、総裁職を傷つけるものであるとして、ヴェルテケ総裁の辞任を要求している。その後、ヴェルテケ総裁は批判を受けたために、宿泊費の半分をドレスナー銀行に返還した。残る半分は連邦銀行がドレスナー銀行に返還したという。

 ドイツ連邦銀行は政治から完全に独立した機関であるため、その独立性の原則から、連邦政府は総裁を解任することはできない。しかし、連邦政府は連邦銀行の独立性を尊重する一方で、ヴェルテケ総裁の辞任を強く要求しており、連邦銀行理事会の休職決定に遺憾の意を示した。

 連邦政府は2006年の総選挙で敗れても、引き続き連邦銀行への影響力を確保するために、ヴェルテケ総裁を早く辞任させて、有力な後任者(連邦財務省のコッホ・ヴェーザー事務次官が候補にあがっている)を送り込みたい考えといわれる。連邦政府は欧州中央銀行の金融政策への影響力を強化したい意向である。

 連邦財務省スポークスマンによると、ヴェルテケ総裁は最高の給与水準の政治的官吏である(年収350000ユーロ以上。シュレーダー首相よりも多い)。連邦官吏は連邦官吏法に基づいて、その職務に関連して贈り物や報酬を受けてはならないことになっている。

2004412日)

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