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旧東独から旧西独への人口移動

    連邦国土計画局の統計によると、1990年~2000年の10年間に、旧東独のザクセン州、チューリンゲン州、メクレンブルク・フォアポメルン州では人口が約7%減少したが、旧西独のバイエルン州とバーデン・ヴュルテンベルク州では約7%増加した。人口統計上の推移と人口移動は今後、多くの地方自治体にとって重大な問題になりそうだ。

 今後20年間で、戦後のベビーブームに生まれた人たちが年金受給者の年齢に達する。連邦統計局は、2030年には4人に1人が、2050年には3人に1人が65歳以上の年齢層と予測している。これは社会保険制度に多大な影響を及ぼす。高齢化と並行して、就業可能年齢(1565歳)の人口が減少するからである。現在、ドイツでは、約5500万人が就業可能であるが、30年後には600万人減少し、50年後には1100万人減少すると予想されており、これは20%の減少に相当する。就業可能年齢の人口と年金受給者の割合は、1995年は100人対44人であったが、2030年には100人対71人になると予測されている。

 ハレ経済研究所によると、旧東独では、人口移動の問題も深刻化している。特に、高学歴の若い専門者(女性が多い)の旧西独への移動が顕著である。今後もこの傾向は変わらないと、ドイツ銀行の経済専門家は見ている。連邦国土計画局のデータによると、ドイツの人口は2020年までは0,4%増加するが、チューリンゲン州の人口は約10%減少する見通しである。イェーナやケムニッツは約30%減。それに対して、バイエルン州とバーデン・ヴュルテンベルク州の人口は約3%減少すると予測されている。

 一方、旧西独でも人口の減少が深刻化している地域がある。例えば、かつてはヨーロッパ最大の工業地帯であったルール地方。ハーゲン市は2020年までに人口が16,3%減少すると予想されており、市の荒廃化が懸念されている。70年代は人口235000人であったが、現在は202000人、2020年には17万人弱に縮小するという。ヴッパルタール、ゲルゼンキルヒェン、クレフェルドなども人口が急減すると見られ(デュッセルドルフでさえ5,3%減)、ルール地方の「旧東独化」は深刻である。

このような人口統計上の推移は大きな社会問題と経済問題をもたらす。今まで様々な層の人々が混合していた地域が「分解」し、地域のゲットー化が進む。しかも、旧東独とは異なり、ルール地方には外国人が多いことも大きな社会問題に発展することが懸念される。

 地方自治体は社会扶助負担の増加だけでなく、インフラコストの急増の問題も抱えている。現在の人口を基に作られたインフラコンセプトでは対応できなくなるからである(学校や幼稚園の閉鎖、乗客の少ないバスの運行など)。しかも、人口移動だけでなく、死亡数の増加も人口縮小を加速するという。

2004419日)

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