オバサンの独り言

 財政赤字という穴はますます大きくなるばかりだ。今年の税収は連邦政府の計画よりも96億ユーロも少なくなる見通しであるという。

 この税収予測が発表される前に、会計検査院は異例の厳しさで連邦政府を批判していた。希望的観測による都合のよい予算ではなく、もっと現実に即した予算を作成しなさいというわけだ。そして、お金が足りないのなら、節約しなさいと勧告している。この「常識」を会計検査院が政府に訓辞しなければならないのがドイツの悲しい現状である。

 はじめから達成できないことを承知の上で予算を組むという厚顔無恥。何でも「景気の回復が遅れているから」という口実で片付けようとする責任逃れ。税収が足りないのなら、借金すればよいという無責任さ。大きな財政赤字を抱えても、将来への投資、すなわち教育と研究開発への投資は必要だという。その通りである。しかし、無駄遣いしているところで節約して資金を調達するというのではなく、借金をして穴埋めすればよいという考え方に問題があるのだ。

 お金が十分になければ、買いたくても買えない。我慢するしかない。節約してお金を貯めてから買う。これが庶民の常識だった。ところが、豊か過ぎる時代になってから、私たちは我慢することができなくなってしまったようだ。今、現金がなければ、銀行から借りればよい。クレジットカードで払えばよいと安易に考えるようになってしまった。

 携帯電話が若者の間でブームになってから、若者の借金が増えているという。便利な携帯電話、クレジットカードは私たちの経済観念を麻痺させてしまう。豊かな時代に育った若者は我慢することができない。

 しかし、財政赤字を増大させ、若い世代の将来の負担をどんどん増やしている大人たちに、携帯電話で借金する若者たちを批判する資格があるのだろうか。私たちは再び、「我慢すること」を求められている。

20045月18日)

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