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SPD、市民保険の導入を検討

 社会民主党(SPD)のミュンテフェリング党首とシュミット社会・保健相は、現行の法定疾病保険を市民保険に改造し、できるだけ早い時期に導入する方向で検討しており、2005年に法案を提出することも有り得るという見解を示した。SPDの作業部会が今秋までに基本方針を提示する計画である。緑の党も市民保険の導入を提唱している。

 SPD のシュティーグラー氏は、多くの法的問題があるため、2006年の総選挙前に法案を提出することは難しいとしながらも、市民保険を選挙戦の主要テーマにする方針であることを確認した。シュミット社会・保健相も未解決の多くの法律問題があることを指摘して、原則的に民間疾病保険を保持する意向であることを明らかにした。市民保険という一つのシステムの中で、民間疾病保険と法定疾病保険が競争することが望ましいという。

 被保険者層を広げること(被雇用者だけでなく、自営業者や公務員、自由業者、高所得者も強制加入)と保険料算定対象となる所得の種類を広げること(賃金だけでなく、利子や家賃、配当などの収入も加算)により、法定疾病保険の財源問題を解決しようというのが市民保険の基本的な狙いである。その際、民間疾病保険も市民保険に編入される。但し、保険料算定限度額は廃止されない。SPD と緑の党は、市民全員が加入する市民保険は公平であり、財源が増えるので、保険料引き下げも可能になると期待している。特に低所得者の負担が軽減されるという。

 しかし、クレメント連邦経済相は市民保険に反対している。市民保険モデルは持続的な財源を長期的に確保するのには適していないと批判的に見ている。また必要とされている構造改革から逸脱すること、民間疾病保険の事実上の終わりが「競争の廃止」同様の悪影響を及ぼすことを懸念している。連邦経済省スポークスマンは、連邦政府は市民保険を決定したわけではなく、統一保険料モデルも検討しているので、現時点ではまだ論議する段階ではないと語った。

 経済界と民間疾病保険連盟は SPD の市民保険計画を「国家医療への道」として批判しており、民間疾病保険を市民保険に編入することを拒否している。全員加入の市民保険は、従来の民間疾病保険が提供している、被保険者の個人的リスクにあわせた保険料というシステムの終わりを意味するという。2002年末現在、民間疾病保険の被保険者は約800万人。編入は競争をもたらさず、単一制度を促す。しかも、保健制度の構造上の問題を解決しないと否定的な見解を示した。

 キリスト教民主同盟(CDU)のシュトルム氏は、法案は連邦議会と連邦参議院で可決されなければならないので、2005年の法案提出は非現実的だと見ている。CDU は所得に依存しない統一保険料モデルを提唱している。

 与党が市民保険導入を加速しようとしている背景には、選挙戦略がある。一つのシステムにおける連帯と公平な分配をスローガンとして、社会保険改革で失った有権者の支持を再び取り戻すことが狙いと見られている。

2004年5月24日)

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