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10周年を迎えた介護保険

   介護保険法は1994年5月26日に連邦官報で公示された。政治家と疾病保険金庫は、大きな赤字と未解決の財源問題にもかかわらず、10周年を迎えた介護保険を成功モデルとして称えた。シュミット保健・社会相は、人口統計上の発展を鑑み、介護保険法を改正して、将来も信頼できる社会保険制度にする意向であることを強調したが、具体的な言明は避けた。疾病保険金庫の代表者は、不況に起因する収入減少を大幅赤字の原因として挙げ、法定介護保険と民間介護保険の合併を提唱した。疾病保険を市民保険に切り替える際に、介護保険も社会的連帯のために法定保険と民間保険を合併すべきであるとしている。

 現在、約200万人の要介護者が介護給付を受けており、その内の約137万人が在宅介護サービスを、約64万人が施設介護サービスを受けている。社会扶助に依存する要介護者が大幅に減少しており、在宅介護給付を受けている要介護者の約5%、施設介護給付を受けている要介護者の約25%が社会扶助を受給している。

 また、この10年間で介護サービスのインフラも大きく改善され、20万人以上の職場が創出された。在宅介護サービス事業者数は約10600事業者(1992年は約4200事業者)で、一部ないし完全施設介護サービスの施設は約9200ヶ所、その内の約8331ヶ所は完全施設介護の施設である。介護保険導入により、社会福祉事務所と地方自治体のコスト負担が軽減された。

 法定介護保険の2003年の欠損は7億ユーロで、2005年の欠損は9億ユーロに増加する見通しである。その結果、2006年末には準備金がゼロになると懸念されている。疾病保険金庫によると、この深刻な財政問題の要因は収入減少と介護給付の拡大であるという。2010年に達すると予想されていた介護サービス受給者数はすでに2003年に上回ってしまった。シュミット保健・社会相は赤字の原因として、過去3年間の経済不況を挙げた。

 連邦政府は痴呆症高齢者に対する介護サービスを拡大する意向であるが、一般的な保険料率引き上げは避けたい考えである。また、政府は、連邦憲法裁判所の判決(子供のいる家庭の負担軽減)を立法化しなければならない。政府は子供のいない人の介護保険料引き上げを計画しているが、疾病保険金庫は子供のいる人への補助金支給ないし税制上の優遇措置を提案している。

20045月31日)

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