オバサンの独り言

 6月12日にサッカー欧州選手権が始まった。これから3週間は欧州の最大のテーマは政治でも経済でもなく、サッカーだ。普段はサッカーに興味のない人でも自国のチームの勝敗に一喜一憂する。愛国心に賛成も反対もない。母国との一体感がこんなに強く感じられるときはないだろう。

 翌日の6月13日は欧州議会選挙だった。欧州連合が一気に25カ国に増え、EU憲法やトルコ加盟の問題も活発に議論されていることから、有権者の関心が高まったかに見えたが、投票率は史上最低だった。各国の大統領や首相は欧州連合を褒め称えているが、一般市民の日常生活からはまだ程遠く、欧州連合に対する不信感は根強い。

 欧州連合は米国と対等に競争できる共同体になることを目指して、さらに拡大しようとしている。そのうち、欧州連合の「欧州」を書き換えなければならなくなるかもしれない。欧州の歴史を振り返ると、一国の独走を阻止するという意味で、欧州連合の果たす監視機能は重要である。その一方で、巨大な官僚組織に肥大化すると(すでにこの問題は表面化している)、国際連合のような身動きのできない肥満体になる危険性がある。

 最近、肥満の人が増えていることが大きな社会問題になっているが、欧州連合の肥満化にも何らかの処方を施さなければならないのではないだろうか。このままにしておくと、様々な優遇措置を享受しているEU官僚や議員の「生活習慣病」(例えば、モラルの腐敗や贈収賄、税金の無駄遣い)がどんどん増えてくるだろう。正しい食生活とダイエットは一般市民だけでなく、肥満化しつつある欧州連合にも求められているのではあるまいか。

 欧州の人たちは欧州人としてのアイデンティティーを持つ一方で、自国への愛国心も強い。サッカー欧州選手権ではそれが如実に表れることだろう。ドイツも若者の喫煙で欧州のマイスターになるのではなく、サッカーで欧州1位になってほしいものである。

2004年6月14日)

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