オバサンの独り言 欧州連合加盟国25カ国の首脳がEU憲法で合意した。全加盟国がこれを批准しなければならないので、計画通りに2007年に発効するかどうかは確実ではないが、25カ国の首脳が合意したこと自体が歴史的な出来事といえよう。 EU憲法に規定されている決定方式は、「加盟国の55%以上が賛成し、かつ賛成国の人口合計がEU総人口の65%以上」でなければならず、拒否の成立には「最低4カ国の反対が必要」と している。さらに、政治的に特に重要な決定では、「加盟国の72%以上の賛成と、総人口の65%以上の賛成」が必要になる。この二重多数決方式により、大国独仏英の独走と小国によるボイコットが防止される。欧州の歴史を振り返ると、この決定方式は賢明な妥協だと思う。 しかし、首脳会議はプローディ欧州委員会委員長の後任者では合意に至らなかった。これは強引な独仏主導に対する反発であり、欧州連合も政党政治になりつつあることの兆候である。欧州議会の権限が拡大されれば、当然のこと、政党間の権力争いも厳しくなる。シュレーダー首相とシラク仏大統領は、大国主導という過去の遺産がなくなりつつあることを実感したことだろう。 25カ国は議会承認か国民投票でEU憲法を批准しなければならない。1カ国でも批准できなければ、EU憲法は「振り出し」に戻る。2年後に「あがり」に着くかどうか、スリル満点だ。今まで遠い存在だったEUが 一般市民にも身近なテーマになるか。市民の不信感を拭えるか。なにしろ25カ国の大所帯なのだから、抱える課題も大きい。 欧州諸国が過去の歴史から学んだ知恵の結晶が欧州連合である。アジア諸国もこれに倣って、アジアの道を模索してほしいものだ。日本は経済だけでなく、政治的にももっとアジアに目を向けて、イニシアティブをとらなければならないのではないか。静かに、しかし着実に、アジアの 経済的・政治的勢力図が描かれ始めている。日本が欧州諸国の巧みな外交から学べることは多い。 (2004年6月22日)
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