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ジーメンス社、週40時間労働に戻る

   ジーメンス社と金属産業労働組合は賃金補償なしの週40時間労働で合意した。ジーメンス社は生産拠点を外国に移転する計画であったが、労働組合が賃金補償なしの週40時間労働を受け入れたため、既存の職場は確保されることになった。この補充労働協約は今年7月1日に発効し、2年間有効である。

 合意した補充労働協約によると、ジーメンスは旧西独における週35時間労働を認めるが、事業所内の話し合いにより必要に応じて労働時間を延長できる。まずはボホルト工場とカンプ・リントフォルト工場にこの補充労働協約が適用され、携帯電話生産拠点のハンガリーへの移転が回避された。4500人の従業員には賃金補償なしの週40時間労働が導入される。さらに、クリスマス手当てと休暇手当てがなくなり、業績に応じたボーナス(月給の最高90%)が支給される。それに対して、ジーメンス社はまず2年間の職場保証をする。他の生産工場でも補充労働協約を交渉中で、9月末までに解決策が見つかるものと予想されている。

 この合意により、ジーメンス社は労働コストを30%ほど削減することができるという。これはコスト全体の約15%を占め、同工場で生産される携帯電話1台当たり5ユーロの節約に相当する。その結果、生産コストがハンガリーの水準になるという。

 フォン・ピーラー社長は労働組合との合意を「理性の勝利」と評価した。また、労働組合のフーバー副委員長は、この合意は人員削減と外国への職場移転に対する代替があることを示したと語った。

 今回のジーメンス社と労働組合の合意は、ドイツ経済界に大きな波紋をもたらしており、職場確保のための労働時間延長が再び活発に議論されている。メルケルCDU党首とシュトイバーCSU党首は「正しいシグナル」として歓迎している。クレメント経済相(SPD)も合意を歓迎しており、ケース・バイ・ケースで労働時間をフレキシブルに形成していくべきであると語った。しかし、労働組合は、今回の合意は個別ケースであり、ジーメンスの他の拠点のモデルでも、他の企業のモデルでもないと強調し、全国的な週40時間労働の導入を拒否している。

 バイエルン州のヴィースホイ経済相は、職場と生産拠点を国内に確保するための正しい道だと語った。労働市場専門家は、ジーメンスのモデルにより低賃金国への職場移転を回避できると見ており、事業所レベルでのフレキシブルな労働時間形成を要求している。また、キリスト教民主同盟(CDU)のメルツ氏は、労働組合首脳部の同意なしに事業所レベルで労使が申し合わせできる法的枠組みが必要であると語った。

 今後、賃金補償なしに週労働時間を40時間以上に延長する企業が増えることが予想される。すでに、旅行会社や航空会社が賃金補償なしの労働時間延長で労働組合と交渉中である。

2004年6月28日)

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