オバサンの独り言 ドイツ企業が世界に先がけて労働時間短縮を進めていた1990年代初頭、「労働時間短縮」という魔法の言葉の謎解きのために、日本から多くの専門家やジャーナリストがドイツに取材に来た。 ドイツ人は日本人のようにダラダラと仕事をしないで、集中的かつ効率的に働くので、生産性が高いのだと言われていた。確かに、残業をしなくても、ちゃんと仕事をこなしていた。ドイツは休暇日数(有給休暇+祭日)でも世界チャンピオンである。 そのドイツで、週50時間労働や有給休暇と祭日の削減を要求する声が聞かれるようになった。「外国への移転」を殺し文句に労働時間延長を実施する企業が増えている。週35時間労働で高賃金のドイツ企業が厳しい国際競争で勝てるはずがない。「メイド・イン・ジャーマニー」であれば、高くても売れる時代は終わってしまったのである。ドイツ人はようやくそれに気付き始めた。 ある大手自動車メーカーが従業員に人件費削減計画を提示して、労働時間延長を要求しているという記事を読んだ。人件費を削減できなければ、「生産拠点を移転するぞ」と脅かしているらしい。この会社の社長は、自分の経営戦略の大失敗をよそに早々と契約を更新して、社長の座に納まっている人である。米国トップマネージャー並みの報酬欲しさに無理やり米企業と合併したと陰口をたたかれている「あの人」である。 同じ新聞に、サッカー欧州選手権で優勝したギリシャのレーハーゲル監督がドイツチームの監督就任を断ったという記事が載っていた。契約通り2006年までギリシャチームの監督をするという。彼の報酬はドイツの監督よりもずっと少ない。しかし、彼は、彼を信頼し、無欲になってチームのためにプレーする選手たちを見捨てることができないのだろう。そこに、無名チームを欧州チャンピオンに築き上げた監督と選手の強い絆が感じられる。 困難をどう乗り越えるか。企業も労働組合も従業員も原点に還って、発想の転換を図らなければならない。 (2004年7月12日)
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