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リュールップ教授、法定疾病保険改革モデルを発表

 連邦政府の顧問であるリュールップ教授は7月15日(木)、法定疾病保険の一括保険料制への切り替えを提唱するモデル案を発表した。それによると、大人と子供から徴収される一括保険料額は疾病保険金庫の総支出に基づいて算定される。今年の支出をベースに算定すると、大人一人当たり月額保険料は一括169ユーロ(家族の一員(主婦)も一括保険料を払う)、子供が78ユーロになる。但し、一括保険料の額は統一したものではなく、疾病保険金庫ごとに異なり得る(疾病保険金庫間の競争促進)。

 また、社会的調整として、子供と低所得者への補助は税金で賄う。子供の保険料78ユーロは親が払うのではなく、国が税金で賄う。民間疾病保険の被保険者にも子供一人当たり78ユーロが支払われる。一括保険料が名目上の所得の12,5%以上になる場合には、国が補助する。民間疾病保険はこのモデルの対象になっておらず、民間疾病保険の廃止や統一制度への統合はない。

 リュールップモデルでは、法定疾病保険が所得比例保険料方式から一括固定保険料方式に切り替えられる。労働コストへの負担が軽減され、財源の一部が税金で賄われる。法定疾病保険への使用者負担分は被雇用者の名目上賃金に上乗せして支払われるため(給与に加算され、課税される)、法定疾病保険への加入義務の上限は現在の3862ユーロから4105ユーロに引き上げられる。

 また、使用者の社会保険料負担分が名目上の賃金に上乗せされることから、他の社会保険料率が全部で1,5ポイント低下する。子供と低所得者の一括保険料を税金で賄うために、リュールップモデルは財源としていくつかの可能性を提案している。例えば、付加価値税を現在の16%から18,5%に引き上げること、(ドイツ統一のための)連帯税を現在の(賃金・所得税の)5,5%から17,5%に引き上げることなど。社会的調整額は全部で225億ユーロと見積もっている。

 リュールップ教授は、保険料率の安定はさらなる改革なしには中期的に達成できないと語った。一括保険料への切り替えは長期的に労働市場の負担を軽減し、人口統計上の展開も考慮しており、与党の市民保険やCDUの一括保険料モデルよりも公平で、透明性があり、効率的であるという。しかし、社会の高齢化と医療発展のコストをシステム切り替えで解決できると信じるのは幻想に過ぎないと釘を刺した。彼の提案は連邦政府が提唱する市民保険モデルの代替であり、CDUとCSUのための妥協案であるという。

 リュールップモデルはキリスト教民主同盟(CDU)のコンセプトを緩和したもので、CDUは基本的にはリュールップモデルをポジティブに評価している。但し、子供のいる家庭と低所得者の負担が大きくなるとして、社会調整財源のための付加価値税引き上げには反対している。目下、CDUとCSUは疾病保険改革コンセプトについて交渉中である(CSUはCDUの一括保険料案に反対)。経済専門家も税金引き上げには反対している。

 それに対して、与党は、一括保険料モデルは社会的に公平でないとして、市民保険(全国民が加入する所得比例疾病保険)コンセプトを作成している。与党の市民保険モデルでは、年間所得が50000ユーロ以下の人の保険料負担が大きく軽減され、年間1400ユーロ以上の資本収益が疾病保険料算定対象所得に含まれる。

 一方、ドイツ第一テレビのアンケート調査結果(550人を対象)によると、市民の64%が市民保険を、24%が一括保険料方式を支持している。

20047月19日)

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