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ダイムラー・クライスラーの労使、合意

 ダイムラー・クライスラーの労使は2007年からの年間5億ユーロのコスト削減で合意した。労働組合が会社側のコスト削減要求を受け入れる代わりに、会社側は約16万人の従業員に2012年までの職場保証を約束した。

 合意内容によると、従業員は2006年から予定されていた2,79%の賃上げを断念する。賃金補償なしの労働時間延長はサービス業務の職員(社員食堂、警備などに従事する約6000人)にのみ適用され、2007年まで週39時間労働が導入される。サービス業務の新規採用者の給与はサービス業界の給与体系(金属産業よりも大幅に低い)に合わせる。研究開発部門(約2万人のエンジニア)の労働時間は任意ベースで週40時間が可能になる(賃金補償あり)。また、取締役の報酬が年間10%削減される。管理職(3000人)の報酬の削減も計画されている。現行の労働協約には本質的な変更がなく、ズィンデルフィンゲン工場特有の特別規定(昼12時以降の夜勤手当支給、労働時間当たり5分間の休憩)は従来通りである。

シュレンプ社長は、労使の合意はドイツの生産拠点を2012年まで保証するものであるとして、ダイムラー・クライスラーにとってもドイツの立地にとっても良い解決策であり、「ドイツ立地のためのモデル的性格」が強いと語った。ドイツは統一した労働時間延長は必要ないという。ペータース金属産業労組委員長もドイツの立地にとって良い解決策だと評価した。

 ダイムラー・クライスラー経営陣は、年間5億ユーロのコスト削減を達成できなければ、ズィンデルフィンゲン工場におけるメルセデスCクラスの製造をブレーメンと南アフリカの工場に移転すると発表していた。この生産移転は6000人以上の職場削減を意味していた。

 労使の合意は政界と経済界で一様に歓迎されている。シュレーダー首相は、「理性の勝利」と評価した。ダイムラー・クライスラーの例はそれぞれの事業所の必要性に応じた労働時間モデルを構築できることを示しているとして、統一した労働時間規定に反対する見解を明らかにした。また、金属産業労組は、全国統一した労働時間延長に断固反対することを強調した。

 ジーメンスに続くダイムラー・クライスラーの労使合意が他の企業にも影響を及ぼすかどうかは未定であるが、オペル、VW、MANなどもコスト削減を迫られており、今後の労使交渉が注目されている。VWは2011年までに30%の人件費削減を計画している。

 大きな欠損が経営陣の拡大戦略の失敗に起因しているにもかかわらず役員報酬が上昇しているダイムラー・クライスラーで、経営陣が人件費削減を一方的に工場従業員に要求したことから、労使交渉は大きな社会問題として注目されていた。業績に見合わない高すぎる役員報酬を巡り、モラルと不透明な報酬決定に関する議論が活発になっている。

2004年7月26日)

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