ドイツのニュース

連邦政府の大学授業料導入禁止は無効

 連邦憲法裁判所は1月26日(水)、全国的な大学授業料の禁止は州の立法権を侵害するため、これを無効とするという判決を下した。判決によると、連邦には大学授業料禁止を規定する権限はない。基本法に基づいて、連邦は大学制度の一般的原則だけを規定する権限を認められており、現政権が2002年8月に行った大学大綱法改正(全国的に大学授業料導入禁止を義務付ける規定を追加)は「等価値の生活環境の創出」のためにも「法と経済の統一の維持」のためにも必要ではないとしている。

 また、できるだけ多くの国民に大学進学を可能にするという目的は全国統一した規定を必要としていない。大学授業料を導入した州の住民が「生活環境の等価値」と一致しない不利益を負う場合にのみ、大学授業料に関する連邦法が認められる。大学授業料導入により発生し得る大学生の州間の移動と学生が増える州のキャパシティーの問題も全国統一した規定を正当化しないとしている。

 一方、連邦憲法裁判所は、社会的に均衡のとれた授業料モデルを導入するよう州政府に求めている。裁判官は、大学授業料が合憲であるかどうか、あるいは政治的に正しいかどうかを決定したのではなく、連邦が授業料を禁止できるかどうかの問題を決定しただけであることを強調した。

 判決後、敗北を認めたブルマーン連邦教育研究相(社会民主党)は、連邦は大学授業料に関する規定には関与せず、その責任を州政府に任せると語った。同時に、将来も親の経済状況に依存することなく誰もが大学教育を受けるチャンスを得られること、州境を越えて大学を替えることができることを保証しなければならないとして、そのための環境が整備される前に急いで大学授業料を導入しないよう州政府に警告した。

 それに対して、バーデン・ヴュルテンベルク、バイエルン、ハンブルク、ニーダーザクセン、ザールランドの5州(いずれもキリスト教民主同盟またはキリスト教社会同盟が政権を持つ州)は早い時期に大学授業料を導入すると発表した。多くの州はすでに長期在籍している大学生や専攻を替えた大学生などを対象に授業料を徴収しているが、今回の判決では一般的な大学授業料の導入が可能になる。各州共に半期当たり500ユーロ程度の授業料徴収を計画している。しかし、社会民主党が政権を持つ州政府は当分の間授業料を導入する考えはないことを表明しており、ブルマーン連邦教育研究相もこれを支持している。

 バイエルン州のシュトイバー州首相は、この判決により教育における州の管轄が確認されたとして、連邦制度改革を巡る論議でも相応に対応するよう連邦政府に求めた。全国文相会議のヴァンカ議長は、連邦政府の中央集権化が正当化されなかったとして判決結果を歓迎する一方で、授業料が直接に大学の予算に組み込まれるようにしなければならないと語った。

 ドイツ経営者連盟のフント会長は、国際競争に勝ち抜くための大学の近代化を推進するチャンスと評価している。それに対して、ドイツ労働組合連合のゾンマー会長は、大学授業料は社会的選択を強化するので非生産的であると批判した。

 一方、復興金融公庫(KfW)グループと民間銀行は、大学生のためのローン貸付を検討しており、今年中に学生ローンモデルを発表する計画である。

20051月31日)

戻る