オバサンの独り言

 オクトーバーフェストが10月3日に、2005年度庭園ショーが10月9日に終わり、ミュンヘン市の今年の大イベントはすべて終了した。あとはクリスマスを待つばかりか・・・。

 オクトーバーフェストでは、17日間の開催期間中に約620万人の訪問客が約600万リットルのビールを飲み、95頭の雄牛を食べたという。気の遠くなるような量である。訪問者数でもビール売上量でも新記録は達成できなかったが、主催者も訪問客も満足できる盛況だった。

 訪問客の約70%はバイエルン州の人で、ミュンヘン住民が60%を占めた。外国からの観光客は15%だけというから、オクトーバーフェストは依然として地元 住民の伝統的なお祭りである。バイエルンの民族衣装を着てオクトーバーフェストへ行く若者が多くなったように思う。日本でも夏祭りや花火大会でゆかた姿の若者が増えたのと同じ現象かもしれない。民族衣装をファッション感覚で着る若者の新鮮さが伝統とうまく溶け合っていて、目の保養になった。

 一方の2005年庭園ショーは4月28日から10月9日までの開園期間中に400万人以上の入場者を見込んでいたが、実際の入場者数は目標を大幅に下回る290万人だった。不評だった庭園ショーの欠損は470万ユーロに上り、財政難に苦しむミュンヘン市が負担しなければならない。

 子供が母親に「お花はどこにあるの?」と聞いたというぐらい、花も自然も少ない庭園ショーだった。ミュンヘン市長は「勇気ある新しいコンセプト」にぞっこんほれ込んでいたが、自然の少ない人工庭園はまるでコンセプト漬けの博物館のようだった。動物の匂いを嗅げるコーナー、ありや毛虫の目線で見る自然、モグラを体験するモグラの丘、鳥を体験する鳥の巣(2〜3メートルの大きな卵が置いてある)など、至る所にコンセプトが散りばめられていた。ところが、広い庭園内を横断する長い歩道には日陰を作る木も、座って休むベンチもない(批判を受けて、後から設置したらしい)。コンセプトに夢中になって、客へのサービスを忘れてしまったようだ。

 主催者側は新しいコンセプトを人々に十分に伝えられなかったことと悪天候を入場者不足の理由として挙げていたが、どんなに説明してもらっても入場者は増えなかったのではない だろうか。理屈っぽいコンセプトに違和感を覚えたのは私だけではあるまい。好みの問題かもしれないが、今回の庭園ショーは自然を楽しむことよりも、自然を学ぶことに重点が置かれていたように思う。

 どうしてドイツ人は何でもかんでも教訓を垂れようとするのだろうか。不成功に終わったハノーバー万博も然り。14ユーロも払って人工庭園のコンセプト博物館へ行くよりも、無料のイギリス庭園へ行って寝そべっていた方がよっぽど自然を体験できるだろう。

 ドイツ人は理念とかコンセプトにこだわる。教師のように、メッセージを伝えなければならないと構えてしまう。だから、楽しくないのである。遊び心の欠如とでもいえようか。その反面、オクトーバーフェストやファッシング(カーニバル)のようにただただ飲んで食べて大騒ぎするお祭りとなると、呆れるほどに「真剣に」バカ騒ぎする。ドイツ人はこの両極端でうまくバランスをとっているのかもしれないが、私にはどちらも 「しんどい」のである。

2005年10月10日)

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