オバサンの独り言

 総選挙から1ヶ月が経ち、キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と社会民主党(SPD)は正式な連立交渉に入った。この「結婚を前提にしたお見合い」では、花嫁(メルケルCDU党首)と花婿(ミュンテフェリングSPD党首)、花嫁の兄(シュトイバーCSU党首)がそれぞれの一族郎党を引き連れて、夫婦財産契約の交渉をしている。激しい権力争いの末、大所帯の家長はじめ重職の人選は決まったものの、財産契約交渉は難航している。

 大連合は恋愛結婚ではなく、お家存続のための「打算的な見合い結婚」であり、一族同士の結婚である。 莫大な負債を抱えて傾きかけている家を建て直すために仕方なく、他の裕福な一族から花嫁を迎える花婿は家長の座を花嫁に譲らなければならない。女性として初めて家長になる花嫁へのプレッシャーは大きい。これまでの家長だった花婿の兄は事業に失敗して渋々家を出て行った。その代わり、地方から出てきて同居することになった花嫁の兄が何かにつけて口出しし、身分不相応な財産分与を要求している。この兄は花嫁の頭痛の種である。駆け引き、策略、陰謀の愛憎劇・・・。理性が欲望に勝つか? 権力欲 に燃える男たちの中で、花嫁は家を再生することができるのか? この秋のドラマは見応えがありそうだ。

 連日報道されている連立交渉舞台裏の権力争いや駆け引きはハリウッド映画顔負けのシナリオだ。リアルな政治劇だから 迫力がある。国家財政建て直しや失業対策、構造改革という重い任務を課せられた政治家たちがエゴを丸出しにして管轄権の奪い合いをしている姿に呆れているのは私だけではあるまい。しかし、これこそが中途半端な道を望んだ国民の選挙結果なのであり、このことをドイツ国民は肝に銘じなければならない。

 メルケル氏はその政治経歴において常に過小評価されてきた。旧東独出身で、しかも女性。援護してくれる州もない (メルケル氏は州首相になったことがない)。歴代首相に比べて、極めて異質の経歴といえる。しかし、それにもかかわらず、いつも最後は勝者として権力の階段を上ってきた。 そして、今、その頂点に立とうとしている。今回も彼女の首相としての能力や方針決定権限が疑問視されているが、彼女が再び過小評価を跳ね返し、船長としての舵取りに成功することを願っている。メルケル 氏が虚栄心の強い権力欲旺盛な男たちを巧みに操縦して、ドイツを正しい方向へ導いていけるかどうかを見守りたい。新しいスタイルの指導力を見せてくれるかもしれない。

2005年10月24日)

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