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シュトイバーCSU党首は入閣せず/プラツェック氏がSPD新党首に

 社会民主党(SPD)のミュンテフェリング党首(65歳)が推薦したヴァッサーヘーフェル氏ではなく、若手左派のアンドレア・ナーレス氏(35歳)が14対23の大差で新幹事長候補者に選出されたことから、ミュンテフェリング党首は10月31日(月)、党内の支持を得られなかった責任を取って党首辞任を表明した。これを受けて幹部会は11月2日(水)に緊急会議を開き、ブランデンブルク州首相のマティアス・プラツェック氏(51歳)を新党首に指名した。プラツェック氏は11月14日~16日の党大会で正式に党首に選出される。SPD左派の台頭を懸念するキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)は、改革路線を支持する中道派のプラツェック氏の選任を歓迎している。メルケルCDU党首同様に、プラツェック氏は初の旧東独出身のSPD党首となる。

 また、幹部会は33歳のフベルトゥス・ハイル氏(改革路線を支持する若い議員から成る実用主義的「ネットワーク」グループのスポークスマン)を新幹事長候補に選出するほか、党首代理5人の若返りを図る人選をして、党内の混乱を収拾した。ミュンテフェリング党首は引き続き連立交渉に参加し、予定通り副首相兼労働・社会相として入閣する意向である。

 一方、ミュンテフェリングSPD党首の辞任発表を受けて、シュトイバーCSU党首は11月1日(火)、「ミュンテフェリング氏のSPD党首辞任で連立政権の前提条件が変わり、新しい事態になった」として、経済・技術相として新内閣に入閣せず、バイエルン州首相に留まる意向を明らかにした。ミヒャエル・グロースCSU議員団長が経済・技術相に就任する。メルケルCDU党首はシュトイバー氏の決定を尊重すると述べると共に、グロース氏の経済・技術相就任を歓迎した。

 経済・技術相の管轄権を巡るシャバン教育・研究相(CDU)とシュタインブリュック財務相(SPD)との対立でシュトイバー氏がメルケル次期首相の十分な支援を得られなかったことが入閣固辞の理由であり、ミュンテフェリング氏の党首辞任発表をその好機としたのではないかと見られている。シュトイバー氏とメルケル氏は政策でも対立していたといわれる。

 シュトイバー氏の入閣拒否にはCSU内でも批判の声が大きくなっており、同氏の党内での権威が大きく損なわれた。SPD党首とCSU党首が入閣しないことから、連立政権が不安定になることが懸念されているが、プラツェック氏のSPD党首就任とグロース氏の経済・技術相就任により、メルケル氏がかえって連立政権を運営しやすくなったのではないかとする見方もある。

 CDU/CSUとSPDの連立交渉は予期しない党首辞任や入閣拒否で一時危機の様相をみせたが、SPDが直ちにプラツェック氏を新党首に選任して党内の安定化を図ったため、再び落ち着きを取り戻した。まだ合意に至っていない重要事項があるものの、大連立政権の樹立はほぼ確実と見られている。CDU/CSUとSPDは11月12日までに連立交渉を終え、14日からの党大会で連立交渉結果を承認した上で、11月22日に連邦議会でメルケルCDU党首を新首相に選出する予定である。

2005年11月7日)

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