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全国文相会議、州別PISA調査分析結果を発表

   全国文相会議は11月3日(木)、経済協力開発機構(OECD)の2003年度国際学習到達度調査(PISA)の州別調査結果とその分析結果を正式に発表した(州別調査結果については2005年7月18日のニュースを参照)。ヴァンカ議長(CDU)は、生徒の学力が社会的出身(親の教育水準、職業、収入などの社会的要因)に極めて強く依存していること、州に応じて12~30%の生徒(ドイツ平均では22,3%)が学力6段階中の最低レベル(正しく読み書きができない)に属していること(OECD平均は19,1%)を深刻な問題として指摘した。

 州別PISA調査結果を見ると、生徒の学力が住んでいる州に大きく依存していることが明らかである。極端なケースでは州間で約50ポイントの差がある。これは1年以上の学力格差に相当する。例えば、数学では1位のバイエルン州と最下位のブレーメン都市州には1年間の格差があった。ヴァンカ議長は、ドイツ全体の学力水準を改善するためには、特に学力の低い生徒を早い時期から個別的に支援しなければならないと語った。

 OECD専門家は、ドイツの落第制度にも極めて大きな問題があると指摘した。州に応じて20~47%の生徒が落第しているか、小学校入学を1年遅らせている。ハウプトシューレ(基幹学校)では約50%に達している。OECD専門家と全国文相会議は、落第が学力向上に寄与していない点を指摘して、その代わりに学力の低い生徒の個別指導を強化することを提唱した。

また、調査結果では、一般的に、州のPISA水準が高ければ高いほど、学力に対する社会的出身の影響が小さいことが明らかになった。例えば、バイエルン、チューリンゲン、ザクセン州では社会的出身への依存度がほぼフィンランド並みに低い。しかしその反面、例えばバイエルン州では、同じ学力であっても、大卒者の子供がギムナジウム(高等学校)に進学する確率は専門労働者の子供の6,65倍であるという現実も浮き彫りになった。州平均では4,01倍であった。

ドイツにおける15歳の生徒の約22%は移民の子供であるが、ドイツ語を習得した子供は数学の成績もよかった。特に学力が低かったのはトルコ人の子供だった。また、移民の子供の中でもドイツで生まれた子供は外国で生まれた子供よりも成績が悪かった。

 ギムナジウムの生徒の学力を州別比較すると、州間の格差が極めて大きく、ギムナジウムの学力水準が全国どこも同じではないことが明らかになった。上位のバイエルンとザクセンと下位のハンブルク、ベルリン、ブレーメンのギムナジウムの生徒にも約1年間の学力格差がある。ハンブルク、ベルリン、ブレーメン、ブランデンブルクのギムナジウムはバイエルンのレアールシューレ(実科学校)の学力水準であり、バイエルン州のハウプトシューレはハンブルク、ブレーメン、ベルリン、ブランデンブルク、ノルドライン・ヴェストファーレン州の総合制学校(Gesamtschule)、ヘッセン州のレアールシューレの学力水準にある。

 OECD専門家は、ギムナジウムと中級学校(ミッテルシューレ)の2形態しかないザクセン州がどの学科でもOECD平均以上の成績を達成し、学力の低い生徒のカテゴリーの割合が少なかったことを指摘して、ミッテルシューレが生徒に高い基礎学力を与えていると賞賛した。

2005年11月7日)

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