オバサンの独り言 ビザスキャンダルで批判の的になっている元外務省国務大臣のフォルマー氏が政治的役職を辞任した。連邦議会議員任期中はコンサルタントの副業も休業するという。自分は潔白だが、目前に迫っている州議会選挙で緑の党に迷惑をかけないための辞任だとか。緑の党首脳部は、フォルマー氏が連邦議会議員として規定に則って行動したことを確信しているが、彼の決断を尊重するとコメントした。 2000年3月、当時のフォルマー外務省国務大臣は緑の党の外交政策の一つとしてビザ発給の一時的自由化を各大使館に通達した。このビザ発給自由化が乱用され、特にウクライナから大勢の不法労働者や強制売春婦が人身売買犯罪組織などを通してドイツに不法入国した。この通達は2004年10月に無効となったが、現在、このビザスキャンダルは審査委員会で調査されている。 しかも、フォルマー氏はコンサルティング会社の共同出資者として、民営化された連邦印刷会社の外国事業開拓コンサルタントの仕事もしていた。フォルマー氏の通達でキエフのドイツ大使館が大量に発給した旅行ビザやパスポートも連邦印刷会社が印刷していたという落ちが付いている。 ここで興味深いのは緑の党の反応である。緑の党首脳部は一貫として、キリスト教民主同盟・社会同盟の「汚いキャンペーン」、「誹謗」として反論しており、非を認めず、自己批判もしていない。緑の党の絶対的存在であるフィッシャー連邦外務大臣の首が危うくなるのを恐れているのは言うまでもないが、モラルの高さを自負する緑の党だからこそ、すぐに厳しく自己批判すべきではなかったのか。 緑の党は既成政党に対抗する「抗議の政党」として1983年に初めて連邦議会の議席を獲得し、1998年からは社会民主党と連立して政権を握っている。今の緑の党は裕福になってでっぷりと太った中年のオジさんに似ている。若い頃は未来社会の理念を掲げ、高い理想とモラルを持って大人の既成社会に抗議していたが、出世して重要な職に就き、権力も金も手に入ったら、それを維持することに精一杯で、いつの間にか「一番嫌っていた大人」になっている中年のオジさんである。緑の党の首脳部もみんな中年のオジさん、オバさんになっているから仕方がないかもしれないが。 政権についてからは人権問題よりも経済の方が重要になっているようだし、それまで厳しく批判していたことにも目を瞑ることが多くなった。モラルのハードルも低くなった。つまり、「普通の議員さん」になったのである。議員たちが20代から50代へと年を取るにつれて、党も「抗議の党」から「妥協の党」に変身したということか。 しかし、いくら年を取っても信念を貫く人はいる。初心忘るべからず。言うは易く行うは難し・・・か。 (2005年2月14日)
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