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法務相、各取締役の所得公開を規定する法案を提示

 ツィプリス連邦法務相は3月11日(金)、上場企業の各取締役の所得公開を義務付ける法案を提示した。法務相は企業が任意に各取締役の所得を公開することを期待していたが、公開を拒否する企業が多いことから(ダイムラー・クライスラー、BMW、BASF、ポルシェなど)、法律で義務付けることを決定した。連邦内閣は2ヶ月以内に法案を閣議決定する予定で、公開義務は2006年から適用される見通しである。同法案は連邦参議院の同意を必要としない。

 法案によると、ドイツの上場企業は各取締役の固定給/変動的報酬/長期的報酬(株式オプションなど)/その他の給付(社宅など)の詳細を年度決算に添付して公開しなければならない。但し、株主総会が4分の3の賛成多数で公開の強制を拒否することができる。

 ツィプリス連邦法務相は約1000社が法律の対象になると推定している。これまで、Dax上場企業 30社の内 20社だけが任意に各取締役の詳細な所得を公開していた。M-DaxとS-Daxの企業では、任意に公開した企業が 40%以下であった。法務相は、この法律は透明性に対する株主の権利を強化するために不可欠であると語った。また、米国、カナダ、英国、アイルランド、フランス、イタリア、オランダ、スウェーデンではすでに公開の義務が規定されており、国際的傾向であることを指摘した。

 連邦政府のドイツコーポレートガバナンスコーデックス委員会のクロメ委員長は、企業が任意の自主規制のチャンスを逸したのだから、政府の決定は当然の帰結だと評価している。それに対してドイツ工業連盟(BDI)のトゥーマン会長は、企業には公開を自ら決定できる権利があるとして、連邦政府の決定を批判した。ポルシェのヴィーデキング社長は、基本法は各市民に情報の自己決定権を保証しているとして、法案の合法性に疑念を示した。株主が各取締役の所得を知っても何の役にも立たないと述べ、「取締役レベルの社会主義」を警告した。

2005年3月14日)

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