オバサンの独り言

 昨年1月に発効した保健改革のお陰で、法定疾病保険金庫の2004年度収入が増え、40億ユーロを超える黒字を計上した。そこで、シュミット連邦保健社会相は国民への約束通り、保険料率を引き下げるよう疾病保険金庫に求めているが、当の保険金庫は「まずは借金を返してから様子を見ます」と、保険料引き下げに乗り気でない。「今年は医薬品が高くなる」とか、「経済の動向が不安定だ」という理由を挙げて引き下げを渋っている。

 借金を返して財政の建て直しを図るのは当然だが、残ったお金はどうするのかなと思っていたら、保険金庫の役員たちは自分の報酬を大幅に引き上げていたそうだ。二桁賃上げ、最高で24%の昇給とは驚いた。しかも、二重にも三重にも報酬を受けている役員もいるというから、開いた口が塞がらない。なんという厚顔無恥。まずは取締役の昇給、残れば保険料引き下げという算段らしい。

 保険金庫の黒字は役員たちの手腕がもたらしたものではない。初診料が導入され、被保険者の自己負担が増えたからこそ、保険金庫の収入が増えたのである。それなのに、まるで自分の手柄かのようにたっぷりとボーナスを上乗せする傲慢な態度は常識では考えられない。利己主義丸出しである。

 最近の政治家や経営者のモラルの低下は実に嘆かわしい。米国並みの報酬を要求しながら、米国並みの透明性は拒否する「ドイツ株式会社」のトップマネージャーたち。株主に自分の報酬を公開することを拒否する彼らは、自分が株主に雇われている身であることをお忘れのようだ。取締役一人ひとりが報酬に見合った業績をあげているかどうかを株主が評価する権利を妨害しているのは、よっぽど自信がないからではないかと勘ぐりたくなってしまう。

 マネジメントの失敗から経営難に陥り、人員削減と生産拠点の外国移転で利益を計上すると、真っ先に自分の報酬を引き上げている役員たちは職場を失った従業員たちの痛みを思ったことがあるのだろうか。10ユーロの初診料を払えないばかりに医者に行かずに我慢している病人がいることを疾病保険金庫の役員たちは考えたことがあるのだろうか。利己的な政治家や経営者の増加と戦後最高の記録的な失業者数は無関係ではあるまい。

2005年3月14日)

戻る