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シュレーダー首相、総選挙を今年9月18日に前倒しする意向

 ノルドライン・ヴェストファーレン(NRW)州議会選挙におけるSPDの惨敗はドイツの政治的情況を電撃的に変えた。選挙結果が明らかになった夜、シュレーダー首相とミュンテフェリングSPD党首は最後の牙城 NRW 州における歴史的敗北の帰結として、2006年9月に予定されていた総選挙を今年秋に前倒しする意向を表明した。シュレーダー首相は、NRW 州における惨敗で連邦政府の政策継続の基盤が疑問視されたとして、「改革政策への明確な支持を得るために総選挙を前倒しする」と語った。SPDは奇襲攻撃で反撃に打って出たが、それが功を奏するかどうかは極めて不透明である。

 翌日の5月23日(月)、ミュンテフェリング党首は、SPD幹部会が全員一致で総選挙前倒しに同意したと発表した。内閣改造はせず、7月1日にシュレーダー首相が連邦議会に自己の信任を求める動議を提出するという。基本法第68条に基づき、連邦議会議員の過半数の同意を得られない場合には、連邦大統領は連邦首相の提案に基づいて、21日以内に連邦議会を解散することができる。解散後60日以内に総選挙が実施されなければならない。従って、遅くとも9月18日までに総選挙が実施されなければならないが、各州の夏休みが終わってから総選挙を実施するとなると、9月18日(日)しかない。シュレーダー首相はすでに連邦大統領に総選挙前倒しの意向を伝え、各党の党首とも会談した。

各党とも総選挙前倒しを歓迎している。緑の党はフィッシャー外務相を党代表として総選挙に臨む意向を表明した。SPD内では 批判の声も聞かれ、特に左派議員の間では政策の転換を求める声が多いが、SPD首脳部は「アジェンダ2010」を政策目標とし、シュレーダー首相を首相候補として、改革政策の継続を国民に訴える方針である。緑の党との連立の継続については明確にしていない。

 ドイツでは恣意的な解散を避けるために、任期中の解散・総選挙には制約が設けられている。1982年に当時のコール首相が同じような信任動議をして連邦議会の解散を図ったが、カールステンス大統領は憲法上の懸念有りとした上で連邦議会を解散した。連邦憲法裁判所は解散を認めたものの、恣意的な解散の乱用に釘を刺し、解散の前提条件を明確化した。今回の解散にも憲法上の懸念が残されている。

 CDU/CSUは5月30日に首相候補者を発表する予定であるが、メルケルCDU党首が首相候補になることは確実と見られている。メルケルCDU党首は、「SPD/緑の党連立政権が終わる日がドイツにとって良い日である」と述べ、CDUが総選挙に臨む用意があることを明らかにした。各党ともに選挙戦の準備に入った。

2005年5月24日)

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