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先妻よりも子供の扶養請求権を優先

    ツィプリース連邦法務相は子供と未婚の母の扶養請求権を強化する扶養法改正案を発表した。1977年に発効した現行の扶養法を今日の社会状況に適応させることを目的としており、特に高い離婚率がその背景にある。1977年の離婚法改正以来、離婚件数が急増しており、夫婦の3分の1が離婚している。過去10年間で離婚件数は37%ほど増加した。しかも、結婚期間が短くなる傾向にあり、再婚が増えている。

 主な改正事項は、1)未婚の母親と離婚した母親の扶養請求権の格差を縮小する、2)離婚した人は長期に渡って扶養費を受けるのではなく、できるだけ早く働き始めて自立しなければならない、3)扶養費の配分では子供が最優先される。

 改正案では、扶養請求権の優先順位が変わり、1番目が子供、2番目が子供を養育する片親(未婚の母もその対象となる)、3番目が子供を養育しない先妻。現行の法律では、1番目が先妻と子供であるため、子供の扶養費が少なくなる。その結果、社会扶助受給者に占める未成年者の割合が38%に上昇している。ツィプリース法務相によると、この改革では子供の幸せを最優先しているという。

 法改正により社会扶助に依存する子供が少なくなると同時に、扶養義務者の経済負担が軽減するので(先妻の扶養請求権の格下げ)、再婚して新しい家庭を築く現実的なチャンスが改善される。また、先妻よりも子供に扶養費を払いたいと思っている男性が多いことから、扶養義務のある父親の支払いモラルが改善される。

 但し、結婚期間の長い夫婦の離婚の場合は例外とし、子育てが終わった後も特別保護が必要であるため、先妻の扶養請求権は2番目に位置する。この例外事項の対象となる結婚期間については法案は規定していないが、同法務相は平均で10~15年と見ている。

 また、改正案では「離婚後の自己責任」が強化され、移行期間後は原則的に自己責任(早期の自立)が義務付けられる。その結果、「医者の奥様」が離婚後もそれまでの高い生活水準を要求することができなくなる。現行の法律でも扶養請求期間や扶養費の制限が多少認められているが、実際には、離婚後に就職を遅らせても扶養請求権を失わないケースが多い。

 改正案では、生活水準が離婚前よりも低くなる場合でも、その職業に就くことが要求され、子供のいる先妻は従来よりも早く働き始めて自立しなければならない。現行法では、子供が約16歳になると、常勤の職場で働くことを要求されるが、それまでは扶養費を先夫に請求できる。ツィプリース法務相は、女性の就業率が高くなり、保育サービスが改善されているので、現行の法律は時代遅れになっていると語った。

 改正案は具体的な年齢や移行期間を規定しておらず、裁判所が個別ケースごとに決定するとしている。新しい扶養法は2006年に発効する予定である。

2005年5月24日)

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