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親の介護費用に対する子供の負担義務に制限

 連邦憲法裁判所は6月7日(火)、親の介護費用に対する子供の負担義務を制限する判決を下した。それによると、成人した子供は、要介護の親に対する扶養義務がある場合にも、自らの老後の蓄えをする権利を有する。子供に経済的に過大な要求をしてはならない。自分の家族(夫ないし妻、子供)の扶養と老後の蓄えの方が親の扶養よりも優先される。子供が親の介護費用を負担しても「適当な生活水準」を確保できる場合にのみ、親の介護費用を負担しなければならない。成人した子供の負担は法律によって制限されなければならないとしている。

 ボッフム市の社会福祉事務所は66歳の女性に対して、その母親の介護施設における費用(不足分を補うために市が社会扶助を支給)として約63000ユーロを請求したが、女性に十分な収入がないために、女性が所有する不動産を担保にして借り入れし(強制担保)、返済するよう要求した。デュイスブルク地方裁判所は、社会扶助返済のために、所有する家を担保にして無利子貸付金を借り入れることをこの女性に課した。

 それに対して、連邦憲法裁判所は、子供が親の扶養ゆえに自分のこれまでの生活水準を著しく、かつ持続的に低下させる必要のない場合にのみ、親の扶養費を払わなければならないとする連邦通常裁判所の新しい判例を指摘して、この女性の場合はそれに当てはまらないと判断した。デュイスブルク地方裁判所の判決は、生存の最小限度を保証する国の援助(社会扶助)を請求する権利を国民が有する社会国家の原則に反するので、違憲であるとしている。成人した子供は、親の扶養費を払うために、自分の老後のために考えている家を質権設定する必要はないという。

 要介護者が介護施設における費用をその年金や財産で賄えない場合に、社会福祉事務所は原則的に費用の一部を子供に負担させることができる。財政難であることから、社会福祉事務所が子供に親の扶養義務を要求する傾向が見られる。連邦憲法裁判所の判決を受けてボッフム市は、「社会扶助の支給を管轄とする地方自治体が高齢化社会を賄うことはできない」として、介護保険改革を政府に要求した。

 介護施設の要介護者(約60万人)の約3分の2が介護費用を補うための社会扶助を受けている。要介護者が自分の年金、財産、介護保険で介護費用全額を払えない場合に、地方自治体が社会扶助で不足分を払っており、地方自治体が介護費用の一部を負担しなければならないケースが増加している。

2005年6月20日)

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