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ケーラー連邦大統領、連邦議会を解散

 ケーラー連邦大統領は7月21日(木)夜、全国民向けにテレビ演説し、基本法第68条に基づいて連邦議会を解散し、総選挙を9月18日(日)に設定したと発表した。連邦と州の財政が過去にない危機状態にあることを指摘して、「この深刻な状況下では国は不断かつ強力に政策を遂行できる政府を必要としており、そのためには政策遂行できる過半数が必要である」と語った。連邦議会におけるぎりぎりの過半数では政策を不断かつ強力に遂行できないというシュレーダー首相の「状況判断」に同意すると共に、連邦議会解散のための憲法上の前提条件が満たされると判断したという。「このような現状では、主権を有する国民がドイツの将来の政治を決定できることが正しい」と述べた。(2005年5月24日と7月4日のニュースを参照)

 シュレーダー連邦首相は、「政党も市民もその大半が前倒し選挙を支持している」として、ケーラー大統領の決定を歓迎した。また、前倒し総選挙は改革政策継続のチャンスであるので、社会民主党(SPD)の連邦首相候補として選挙戦に臨むことを明らかにした。ティルゼ連邦議会議長(SPD)は、シュレーダー首相と全政党が提案した連邦議会解散の道を合憲と判断したケーラー大統領の決定を歓迎している。

 メルケルCDU党首は、「ドイツ人は新たな出発のために総選挙を活かさなければならない。失業者500万人という事態を受け入れてしまってはならない。」と述べた。また、シュトイバーCSU党首はケーラー大統領の決定を「政権交代へのチャンス」と歓迎している。緑の党のザーガー党議員団長は、「総選挙は現状では唯一正しい道だ」と語った。ヴェスターヴェレFDP党首は、「ドイツは新たなスタートを必要としている」と述べた。

 しかし、緑の党のシュルツ議員とSPDのホフマン議員が今回の解散手続きを違憲として、連邦憲法裁判所に提訴することを表明しており、最終的な決定は連邦憲法裁判所に委ねられる。連邦憲法裁判所が解散手続きを違憲とした場合には、前倒し総選挙にストップがかかるため、8月末ないし9月初旬の同裁判所の決定が注目される。

 ケーラー連邦大統領の議会解散発表を受けて、各党は本格的な選挙戦に入った。すでに各党ともマニフェストを発表している。旧東独を支配した社会主義統一党SEDの後継組織である民主社会党PDSと、SPDを離党した左派議員による「労働と社会的公正のための新党WASG」が左派連合「左派党(Linkspartei)」を組んで、特に旧東独で急激に支持率を伸ばしており、当初予想されていたCDU/CSUとFDP連立政権の成立が危ぶまれてきた。CDU/CSUとFDPが過半数を達成できない場合には、CDUとSPDの大連合の可能性も出てきた。CDU/CSUはマニフェストで付加価値税引き上げを公言してから支持率を下げている。7月22日の世論調査では、各党の支持率はCDU/CSUが43%、FDPが7%、SPDが26%、緑の党が10%、左派党が10%。

 今のところ、CDU/CSUもSPDも単独政権の可能性はほとんどない。連立政権の組み合わせの如何は、各党が旧東独における左派党の躍進をどこまで食い止められるかにかかっている。これから約2ヶ月間の「熱い選挙戦」が始まった。

2005年7月24日)

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