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連邦議会、父母手当案を可決

 連邦議会は9月29(金)、父母手当法案を賛成多数で可決した。野党は反対した。父母手当(Elterngeld)の導入により、現行の育児手当(Erziehungsgeld)は廃止される。(20065月15日のニュースを参照)

 父母手当案によると、父親または母親は20071月1日以降に生まれた子供のために1年間育児休業し、あるいは週30時間以下の短時間勤務にして育児に専念すれば、所得保障として父母手当を受給できる。両親が正式に結婚しているか否かは問われない。

 父母手当(月額)は過去12ヶ月間の平均実質所得の67%で、最高1800ユーロとする。低所得者(所得が月額1000ユーロ以下)の場合は、父母手当が実質所得の100%まで引き上げられる。自営業者も受給できる。就業していない失業者、専業主婦(または専業主夫)、学生は基本支給額300ユーロ(月額)を受給できる。共働きの場合、父親も母親も育児休業ないし短時間勤務をしない場合には、父母手当は支給されない(基本支給額も支給されない)。

 双子や三つ子の場合には、第2子からは一人当たり300ユーロ加算される。また、一世帯に3歳以下の子供が2人いる場合、あるいは6歳以下の子供が3人以上いる場合には、さらに父母手当の10%、または最低75ユーロ(月額)の兄弟姉妹ボーナスが支給される。

 父母手当の支給期間は12ヶ月であるが、12ヵ月後にもう一方の親が育児休業するか、週30時間以下の短時間勤務に切り替えて育児をすれば、さらに2ヶ月間、合計14ヶ月間父母手当を受給できる。この2ヶ月のボーナスは父親に育児参加を誘導することを目的としている。1人で子供を育てる人は14ヶ月間受給できる。

 父親と母親が何ヶ月ずつ育児休業ないし短時間勤務をするかは当事者が任意に決めることができるが、父母手当を14ヶ月間受給するためには、両親ともに最低2ヶ月間育児休業ないし短時間勤務をしなければならない。父親と母親が同時に7ヶ月間育児休業することも可能である。また、父母手当の月額を半分にすれば、支給期間を全部で28ヶ月に延長できる。

 ドイツに長期滞在しない外国人(学生、職業訓練生、戦争中の国からの避難民など)は父母手当を受給できない。

 連邦政府は父母手当の予算を2007年が35億ユーロ、2008年が44億ユーロ、2009年が約38億ユーロと見積もっている。

 フォン・デア・ライエン連邦家族相は、父母手当の導入は若い両親と子供にとって「仕事と家庭の両立のための抜本的な改善」であると語った。今後は、2歳から幼稚園までの期間の幼児保育サービスの整備に尽力するという。

 自由民主党は、保育サービスの欠如が解決されなければ、父母手当はあまり効果がないと批判した。緑の党も特に旧西独で保育施設が不足している現状を指摘し、保育施設が整備されなければ職場復帰は困難だとして、保育サービスの保障を政府に求めた。

 一方、ドイツの企業は父母手当の導入をポジティブに評価していることがアレンスバッハ世論調査会社の調査結果で明らかになった。それによると、回答した505社のうち61%がポジティブに評価しており、55%の企業は従業員が2ヶ月間の育児休業をしても大きな問題はない」と回答している。しかし、「父母手当が自社にとって利点になる」と評価している企業は7%に過ぎなかった。

 また、ほぼ60%の企業が「父親の育児休業ないし短時間勤務」をポジティブに評価しているが、自社でも多くの父親が短時間勤務をすると予想している企業は4%に過ぎなかった。42%の企業は育児休業する父親はいないだろうと予想している。フォン・デア・ライエン連邦家族相は、子育てしやすい労働環境は専門労働力の確保に不可欠であると語った。

2006年10月16日)

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