オバサンの独り言
ライプチッヒ大学の世論調査結果では、極右主義的思想がドイツ社会に広く浸透していることが明らかになった。反外国人的傾向は旧東独に、反ユダヤ人的傾向は旧西独に顕著である。州別で見ると、極右主義的考え方の人が最も多かったのはバイエルン州だった。
そのバイエルン州の首都ミュンヘンで
この新しいユダヤセンターはシナゴーグと教区集会所(幼稚園、学校、集会場、青少年・文化センター、レストランなど)とユダヤ博物館から成る。ミュンヘンの中心にユダヤセンターが建設されたことにはユダヤ人市民にとっても非ユダヤ人市民にとっても極めて象徴的な歴史的意味がある。
ナチスによるユダヤ人迫害と大虐殺という暗い過去を背負うドイツは戦後、「この比類のない大犯罪を絶対に忘れてはならない」をモットーに、ナチスによるユダヤ人大虐殺の事実を徹底して子供たちに教えてきた。しかし、暗い歴史を自己批判的に直視し、過去の清算に努めてきたにもかかわらず、極右主義的思想は依然としてドイツ社会に根強く潜在しているようだ。ミュンヘンのユダヤセンターが厳重な警備なしには存在できないのが現実である。 反ユダヤ主義には宗教的・歴史的背景がある。最近では、トルコやアラブ諸国からのイスラム教徒の移民が増えていること、パレスチナ問題がエスカレートしていることもドイツにおける反ユダヤ主義台頭の要因だろう。 ドイツでは、反ユダヤ主義はタブーである。しかし、理性で抑制しているものは、何かのきっかけで再び感情的に爆発する危険性を孕んでいる。戦後教育による抑制機能はまだ存在しているが、反ユダヤ主義を根絶するまでには至っていない。 かえって時間の経過と共に、負の歴史からの免除を主張する風潮が見られるようになった。「ユダヤ人もパレスチナ人を殺している加害者ではないか」という理論である。最近のメディアの報道にはこの傾向が著しい。 将来も理性による抑制機能が働くようにするためには、忍耐強く一貫した歴史教育を続けていくしかないと思う。しかし、学校教育だけで反ユダヤ主義を根絶することはできない。子供は大人を見て成長していく。子供は家で親が言うことを聞いて育っているのである。反ユダヤ主義的考え方の若者が増えているのであれば、まずは大人が我が身を省みなければならない。 イスラエルのある精神分析医は、「ドイツ人はアウシュヴィッツのことでユダヤ人を絶対に許さないだろう」と皮肉った。「ユダヤ人はドイツ人の罪の生きた記念碑」だからだという。意味深長な言葉である。 (2006年11月19日)
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