オバサンの独り言

 

 クリスマス前のミュンヘン市内は買物客で賑わっている。今年は景気が回復してきたので、消費者の購買意欲も旺盛のようだ。ショッピングモールは活気に満ちている。

 忙しい買物の合間に、クリスマス市でグリューワインを飲み 、焼きソーセージでも食べながら、師走の慌しさを一時忘れるのも乙なものである。

 不況による買い控え傾向が終わり、消費者の財布の紐が再び緩んできたようだ。ある市場調査研究所によると、今年のクリスマス商戦では「質より値段」から「値段より質」への消費者 の意識の変化が顕著に見られるという。上流階級だけでなく、中流階級でも高級ブランド品、高価な香水やアクセサリーに人気が集まっている。家電品や民生用電子機器でもハイクラスの商品がよく売れているのだそうだ。

 とくにかく、どの店でもレジの前は長蛇の列である。インターネットの時代になってもクリスマス前の本屋の混雑は相変わらずだ。何をプレゼントしたらよいか分からない時は本を買う人が多い。一番無難ということか。でも、お義理で買った本をプレゼントされた人たちはそれを読むのだろうか・・・。

 アレンスバッハ市場調査会社のアンケート調査によると、男性の35%はクリスマスプレゼントの買い物を「面倒くさい義務」と思っており、27%はクリスマス直前に購入するという。それに対して、直前に購入する女性は9%だけで、62%の女性はプレゼントの買い物を楽しんでいるそうだ。

 今年、ドイツの親が子供へのクリスマスプレゼントに支出する金額は平均で子供一人当たり357ユーロだという新聞記事を読んだ。0〜2歳の子供は平均で183ユーロ、12歳以上の子供は平均で441ユーロだというから驚く。物価が高くなったのか、ぜい沢になったのか・・・。

 しかし、クリスマスプレゼントが高級化する一方で、クリスマスプレゼントを節約しなければならない低所得層の人も増えているという。連邦統計局の発表では、2004年は人口の約13%に当たる1060万人が貧困の危機にあ った。これが「豊かなドイツ」のもう一つの現実である。

 毎年クリスマス募金運動をしている南ドイツ新聞には、様々な理由から貧困生活を余儀なくされている人たちの記事が連載されている。健康で、仕事のあるうちは日の当たる側にいられるが、病気になったり失業すれば、日の当たらない側に転落するかもしれない。誰にでも起こり得る切実な問題だ。

 格差社会は今に始まったことではない。貧富の差はいつの時代にもあった。しかし、物質的に豊かになり、物が溢れる社会では、物質的な富に惑わされないようにすることは容易ではない。「富者とは? 自らのくじ(運命=分け前)に満足を感じうる人」というベン・ゾーマの言葉をよく噛み締めたい。

クリスマスは家族で祝う祭日だ。ご馳走を食べて、プレゼントを交換するとき、豊かな消費社会でも買えないものを子供たちに、親に、パートナーに贈りたいものである。最高の贈り物を・・・。

では皆様、楽しいクリスマスと良いお年をお迎えください。

2006年12月22日)

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