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ドイツ初のトルコ人専用老人介護施設がベルリンに誕生

 

 ベルリンのトルコ人会はドイツ初のトルコ人専用老人介護施設をベルリンのクロイツベルク地区に建設する。投資額は約500万ユーロで、年末には171ベッド数を有するホームが運営を開始する。男女別で、男性には男性の介護士が、女性には女性の介護士が世話をする。90人の従業員の大半はトルコ人である。

 食事もトルコの文化・宗教に則った食事になる(豚肉を使用せず、イスラム教の規則に基づく調理法)。施設内の内装もトルコの生活習慣、様式に合わせ、礼拝堂もある。利用者の費用負担はドイツの老人介護施設よりも 20%ほど安い。トルコ人会によると、トルコ人の実質可処分所得は月額約1040ユーロで、ドイツ人よりも約600ユーロ少ないという。

 このベルリン・クロイツベルク老人介護施設(公益有限会社)にはトルコ人会が20%、民間の介護事業会社Marseille-Klinikenが80%出資する。株式上場しているMarseille-Klinikenは主に社会政策上の理由からこの事業に参加するとしている。公益会社であるために利潤追求はできないが、子会社のサービス(介護、管理、クリーニングサービスなど)を利用するので、グループ全体の経済的利点はあるという。この事業が順調に進展すれば、他の大都市でも同じようなプロジェクトを展開していく計画である。需要は大きいと見ている。

 現在、176万人のトルコ人がドイツで生活しており、その内の約10%は60歳以上で、5%以上は65歳の定年を迎えている。1961年に25歳~30歳でドイツに来た最初のトルコ人労働者の多くが年金生活者の年齢に達している。ベルリン州政府は、65~75歳のトルコ人は2020年に2002年の2倍に増加すると予測している。また、統計上では、65歳以上の人の 5%が要介護になっているという。

 これまで、トルコ人のための在宅介護サービスが増加する傾向にあったが、トルコ人専用老人介護施設はなかった。従来の介護施設で移民のための特別サービスを拡大する試みはあったものの、食事や言葉の問題でうまくいっていないのが現状である。ベルリン市には270の介護施設があるが、入居しているトルコ人は40人に過ぎない。

Marseille-Klinikenは51の高齢者施設を運営しており、ホテルのように 2つ星から 5つ星までの施設を所得層に応じて提供することを目標としている。トルコ人専用介護施設の建設により、低コスト市場(2つ星施設)にも参入することになる。ドイツの保健制度では、標準施設(3つ星施設)だけが提供されてきた。

 トルコ人会は、トルコ人専用施設が移民の同化を困難にするのではないかという懸念を否定している。年をとると、同じ文化、宗教、言語の人同士でいたいと思うのは自然の成り行きであるとして、プロテスタント教会やカトリック教会も独自の施設を運営していることを指摘した。

2006年4月10日)

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